
📰はじめに
こんにちは、「あるけまや」風に、少しゆったりと導入からお届けします。今回は、徳島県阿南市の山あいで発見された、古代の“辰砂(しんしゃ)=水銀朱”採掘遺跡、若杉山辰砂採掘遺跡。これ自体が日本有数の鉱山遺構として知られていますが、さらに最近、そこから出土した「木片」に注目が集まっています。鉱石採掘と顔料製造の現場から、木片という“意外な痕跡”が浮かび上がり、古代人の技術・作業環境・流通ネットワークがより立体的に浮かび上がろうとしています。では、「石と木と赤い顔料」が交錯するこの現場を、じっくりと深掘りしていきましょう。

↑遺跡遠景、鉱山遺跡なだけあって山!( ・Д・)
(「徳島県立博物館」のページ内画像より転載)
🏔️ 遺跡の場所と歴史背景
徳島県阿南市水井町、那賀川支流若杉谷川沿いの山腹、標高140〜170 m付近に広がる若杉山辰砂採掘遺跡。ここでは弥生時代後期〜古墳時代前期にかけて、朱の原料である辰砂が採掘・精製されていたことが確認されています。採掘場とズリ(廃石・破砕石の堆積)場からなるこの遺跡は、日本国内で辰砂採掘の実態が明らかな遺構として唯一という評価を受けています。 また、令和元年10月16日に「国史跡若杉山辰砂採掘遺跡」として指定されました。
このように、遺跡そのものが“鉱山・顔料生産の現場”であったことから、石材・工具・鉱石・製造工程・そして流通の痕跡など、多様な視点から研究されています。
🧪 木片出土という新しい手掛かり:何を意味するのか?
近年の調査では、採掘場・精製場とみられる場所から「木片」が複数確認されており、これが鉱石の採掘・加工工程に関わる重要な証拠となってきています。たとえば、岩盤を焼いて割る技法が使われていたという報道もあり、山腹には“すす”付き岩盤が見つかっています。
木片が意味する可能性としては:
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岩盤加熱のための木材使用跡(薪・炭木材)
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採掘坑道支保材または足場材としての木材利用
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辰砂を精製するための道具・木容器などの破片
などが考えられています。
特に「採掘技法に火を使った可能性」の報道は、「木材+火+石器加工」という縄張りを越えた複合作業を想起させ、単に“石を割る場所”から“顔料をつくる工場”という側面を強めています。したがって、木片の出土は“鉱山・精製場=単なる採掘跡”という理解を超え、「木材を伴った工場的現場」であった可能性まで広がっているのです。

↑石臼などの遺物の出土状況!( ・Д・)
(「徳島県立博物館」のページ内画像より転載)
🔧 採掘・精製の工程と出土石器の意義
若杉山では、岩盤を打ち割って辰砂鉱石を露出・採取し、その後、石杵(いしきね)・石臼(いしうす)を用いて粉砕・選鉱する工程が確認されており、その出土品が重要文化財に指定される一部となっています。採掘場跡・ズリ場・精製用石器・土器破片などが揃っている点から、この現場は「原料採取から加工まで一体的に行われていた」と学界では評価されています。
木片の存在を加味すれば、火入れ・木材運搬・支保構造といった技術的・労働的側面も含めて、考古学的な“鉱山・工場”像がよりリアルに描けるようになってきました。たとえば、木材が採石坑内で燃料として使われたという“すす付き岩盤”の証拠も発表されています。こうした工程を通じて作られた辰砂=水銀朱は、弥生末〜古墳前期の埋葬施設・儀礼施設に広く用いられており、若杉山からの流通を通して、当時の社会が顔料・鉱物資源活用に長けていたことを物語っています。

↑辰砂採掘・加工遺跡として色んなものが出るね!( ・Д・)
(「徳島県立博物館」のページ内画像より転載)
🌐 流通・社会的意味:朱の生産から広域交流へ
朱=辰砂・水銀朱という顔料は、古代日本において極めて象徴的な役割を果たしてきました。土器・銅鐸・墳丘・石室内壁などに使用されたことが各地で確認されており、古墳時代前期の埋葬儀礼とも深く関わっています。 また若杉山遺跡は“地域唯一”という立場でありながら、香川県産の石材(ヒン岩)を使用している石杵など遠方材の搬入も確認されており、単なる地産地消ではない広域的なネットワークの存在を示唆しています。
これにより、「阿南・若杉山 → 他地域古墳群」という原料流通ルートの存在が想定され、当時の社会が鉱物資源や顔料を通じて“地域を超えた文化交流”を行っていた可能性が浮上してきています。よって、この遺跡は「ただの採掘場」ではなく、社会・技術・交流の交差点でもあったのです。
おわりに
やはり赤色は血の色であって力の象徴ですから、世界的に古くから使われる色です。辰砂と水銀朱が主ですが、遺体に振りかけるのがよくある事例かな。古代マヤだと神殿全体も真っ赤に塗っていたようだけれど。私がティカルで行った調査では下層の人々の住居の壁も漆喰で覆われた後に赤い塗料で覆われていたみたいだと分かっています。





























