2019ねん 9がつ 23にち(げつよーび、雨)

世はここ2週連続で三連休だ。

3連休ではないが、私もそれなりに休みつつ、リサーチマップの記入欄を埋めている(´・ω・`)


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↑建設された大型物流センターの所在(「産経新聞」の記事内画像より転載;Credit by Sankei Digital)



さて、久々の考古学・歴史ニュースですが、今回は「弥生時代以降の集落跡の上に大型物流センターがイイ感じに建ちましたよ!」ってお話です(。・ω・)ノ゙

今回のお話は、何も遺跡を壊して建てたわけではなくて、むしろ現代社会において私たちの文化遺産との向き合い方を考える上でいいテーマかなと思っています。




調査の概要と発見物

今回のお話の舞台は、大阪府藤井寺市で、ついこの前(2019年7月)世界文化遺産に登録されたばかりの百舌鳥・古市古墳群が所在する街です。

ネット通販で有名なのアマゾン(Amazon)など約10社が入る大型物流施設「レッドウッド藤井寺ディストリビューションセンター」を建設する目的で、甲子園球場のおよそ2つ分に当たる約8万3000平方メートルの広大な敷地を緊急調査しました。


この広大な範囲には、弥生時代から室町時代にかけての集落遺跡である「津堂遺跡」が含まれています。


建設工事に伴う緊急調査は2015年5月から約5カ月間実施され、古墳時代の住居址群や、古墳時代から飛鳥時代にかけての灌漑用水路とみられる溝状遺構などが検出されました。


特に住居址として、地面に穴を掘って柱を建てた掘立柱建物が15棟以上集中して検出される成果がありました。


これらの住居址群が示す時期は、この建設地の近くに位置する「古市古墳群」の築造時期と合致するとみられ、また付近にある「津堂城山古墳」との関係性も示唆されています。


建設予定地の範囲からは多くの土器資料が発見され、遺物整理用コンテナ約230箱分になったそうです。



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何故、面白いニュースなのか?

上に挙げた画像のように、日本には「文化財保護法」が存在します。

現在の建設工事は基礎をかなり地中深くまで入れますので、その際に私たちの共有の財産である文化財(遺跡・遺構・遺物)が壊れないように、事前に調査してデータを取ろうというものです。

例えば明らかにどこを掘っても遺跡である京都では、「文化財保護法のせいで建設が進まない!」、「莫大な予算がかかる!」と悲鳴が上がっているとも聞きますけど、

文化遺産を守るという意味では世界的に見て、画期的な法律なのであります。

この法律が最も叩かれる部分は、「調査費は建設予定者自身が負担する」という点です。

なので個人でマンション建てるといった際に非難の声が挙がります。

私も、京都のど真ん中にマンション建てる予定の女性が「私たちのような普通の個人では払えない!」と言っていたニュースを見たことがあります。

まぁ、京都の真ん中に土地持ってて、新たにマンション経営始める人が「普通の個人」かどうかは甚だ疑問ですけどね( ・Д・)


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↑(「プレスリリース」の記事内画像より転載;ESR株式会社提供)

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↑展示室のガラス張りの床から遺構を見ることができる(ESR株式会社提供のPDFデータを加工)


さて、今回のESR株式会社が建設した大型物流センターは5階建ての施設で、その内の1階部分を展示施設にしたのです。

「企業が積極的に文化を守り、地域との共生を意識することは重要」として、もの凄い素敵な展示室が完成しました。

上に挙げた写真のように、一部ガラス張りの床面からは調査によって明らかとなった遺構面を観察することができます。

海外の新しいタイプの博物館でよく採用されているものですが、子供たちに大人気の展示方法です。

かく言う私も大好きで、割れるわけないと思いつつも恐る恐るガラス面に乗ってみたりします(*^・ェ・)ノ

まぁたぶんガラスじゃないと思うんですけどね(強化何とか?)、少なくとも簡単に割れるものではないのは確実です。

この施設のガラス面はあまり範囲が広くない(2.4×3m)ので、上に乗って観察する必要のないもののようにも思えますので、実際に行ってみる方は勝手に乗らないでくださいね( -д-)ノ




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↑実際に調査で出土した展示物①(「プレスリリース」の記事内画像より転載;ESR株式会社提供)

この物流センターは2017年に完成しており、今年(2019年)の7~8月の平日に展示スペースを一般公開しました。

これまでは完全予約制でしたが、百舌鳥・古市古墳群の世界文化遺産登録を記念して、夏休み限定の企画として行ったそうです。


しかし考古学ファンらが多数訪れるなど好評だったため、ESRは予約なしでの公開を2019年12月27日まで平日午後に続けることにしたそうです。


考古学の世界でも「パブリック・アーケオロジー」なるものが提唱されて、かなりの時間が経ちますが、日本ではさほど浸透していないようにも思います。


これはパブリック・アートのような、文化財を守り伝えていくために考古学と一般市民をもっと近づけていこうとする理念に基づいた考古学の在り方です。


そうした中、今回の事例のような企業が特に地元の住民との連携を図って文化を共に守っていくという活動はとても重要に思えます。


実際に細かく見ていくと、遺物の保管・警備の問題や、重要な資料が日本各地に散在してしまうなどの弊害もあるわけですが、

一方で遺物の保管場所が不足して廃棄しなければならない現状や、倉庫に眠ったままの多くの資料の存在をも踏まえると重要な試みかなと思います。

こういった事例は他にもあるようなので、探してみて紹介したいと思います。

いつか周りのどこの建物も1階や地下階は展示施設&収蔵庫なんて日が来たら、散歩に飽きることがないだろうなと思ったり(=゚ω゚)人(゚ω゚=)ぃょぅ!

↓久々の考古学に関するまともな記事でしたね!( -д-)ノ↓

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