日英記事3本ずつ頑張ってるけど最早つらい、これプラス日英Youtubeか!( ・Д・)
📘 スパルディング (1953) “Statistical Techniques for the Discovery of Artifact Types” 要約
1950年代初頭、アメリカ考古学は記述中心の「文化史的考古学(culture-historical archaeology)」から脱し、定量的手法を導入して「文化変化のメカニズム」を明らかにしようとする転換期にあった。
アルバート・スパルディング(Albert C. Spaulding)はこの潮流の中心に立ち、遺物を体系的に分類するための統計的アプローチを提案した。本論文は、その代表作であり、「型式学(typology)」における客観的基準を与えた最初期の研究とされる。
1️⃣ 背景と目的
当時の考古学では、「型(type)」とは研究者が恣意的に設定する便宜的カテゴリとみなされていた。スパルディングはこれに対し、
型は実際に過去の人々が意識的に作り出した生産・使用のパターンであり、データ内部の統計的構造として検出できるはずだ
と主張した。
したがって彼の目的は「研究者の直観に頼らず、遺物群の中に潜在する自然的クラスターを統計的に発見する」ことであった。これは後のクラスター分析(cluster analysis)や多変量解析の萌芽にあたる。
2️⃣ 方法論
スパルディングは、各遺物(例えば土器片)を複数の属性(attributes)に分解し、それらの共起(co-occurrenceパターンを分析した。
具体的には、
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各属性間の出現頻度をクロス表(contingency table)として集計
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属性の共起確率を用いてχ²検定により関連性を評価
-
有意に共起する属性群を遺物型(artifact type)として定義
という流れを採用している。
この手法により、スパルディングは「統計的に裏づけられたタイプ分類」という新概念を提示した。
3️⃣ 主な成果と意義
スパルディングの分析によって、これまで主観的だった「型」の定義が、データの内部構造に基づく客観的概念として再構成された。
また、遺物群を属性空間(attribute space)上の点として扱う考え方は、のちの考古学的クラスタリングや多次元尺度法の原点となった。
この論文は単なる統計応用にとどまらず、「遺物型とは過去社会における行動パターンの反映である」という理論的視点をも導入しており、定量化と行動科学的考古学の橋渡し役を果たした。
4️⃣ 研究史上の位置づけ
1950年代後半から1960年代にかけて、スパルディングの手法はBinning(1965)やDunnell(1971)らにより改良され、「形式的型認識(formal typology)」の枠組みへと発展した。
さらに、スパルディングはRouseやKriegerとともに「タイプ論争(the 'type concept' debate)」を引き起こし、「型は現実に存在するのか、それとも分析的構築物か」という哲学的問題を提示した点でも有名である。
この論争は、やがてニューアーケオロジー(New Archaeology, 1960s)やプロセス考古学(Processual Archaeology, 1970s)に直結する。すなわち、文化を動的なシステムとしてモデル化する方向へと理論が転換していくきっかけとなった。





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