2025ねん 10がつ 16にち(もくよーび、雨)

雨だ~!!!雨でも最低時給で発掘だ~!!!( ・Д・)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



0001
↑数理的なイメージ!?( ・Д・)



今回はAlex D. Krieger『The Typological Concept』(1944)の要約と解釈!( ・Д・)ってお話です(*・ω・)ノ

*最後にコメントがあるよ!(*^・ェ・)ノ


イントロダクション:問いと状況設定

Krieger の「The Typological Concept」は、考古学における 「type(型、タイプ)」という概念の意味を明確化し、その実務的・理論的機能を定式化しようとする論文である。


彼はまず、考古学的実践において「型」という語が日常的に広く使われている一方で、その厳密な定義や運用ルールが学界で一致していない点を問題視する。型の曖昧さは、分類結果の再現性・比較可能性・歴史的解釈の妥当性を損ないやすいからであり、ここに理論的・方法論的整理の必要があるとする。




1)「タイプ(type)」と「バリエーション(variation)」の区別

Krieger はまず用語的整理に着手する。彼は「type(型)」と「variation(変異)」を明確に区別する必要を強調する。要点は次のとおりである。

  • 「Type(典型)」は分析者が定めるまとまりではあるが、単なる記述上の便宜ではなく、できるだけ「実際の文化的実践(cultural practice)」を反映することが望ましい。つまり「型」は過去の人々が現実に作り、使ったひとまとまりの行為や様式の“化石”として理解されるべきである。

  • 「Variation(変異)」は、ある型の内部で観察される差異であり、時間的・空間的連続性や機能差などを反映する。Krieger は、どの程度の差異を「異なる型」と見なすかの判断基準を提示する必要性を主張する。

この区別は、型の設定が単なる記号的ラベルの付与で終わらないようにし、分類が歴史的・機能的説明につながることを意図している。






2)タイプの目的:分類そのものと歴史的解釈の橋渡し

Krieger にとってタイプ分類の目的は二重である。

  1. 説明的目的(descriptive):資料群を秩序づけ、比較可能な単位に分割する(分析の便宜)。

  2. 解釈的目的(interpretive/historical):分類されたタイプを用いて時空間的な分布やその変化から、文化伝播・交流・技術変遷といった歴史的メカニズムを推定する。

重要なのは、分類が後段の歴史的・行動的推論の土台になる点で、Krieger はタイプ設定がいかにして有効な帰結(たとえば年代的な指標、文化集団の識別)を生むかに強い関心を示している。






3)タイプを「文化的実践の単位」として捉える視角

Krieger の特徴的主張の一つは、タイプは「文化的実践の単位(unit of cultural practice)」であるべきだ、という点である。


彼は、単に形態学的特徴(器形・装飾など)の類似だけで型を決めるのではなく、その型がかつてどのような生産・使用行為や意味をもっていたか(=機能や社会的意味)を考慮すべきだと述べる。つまり、考古学的タイプは「行為の痕跡=化石化した習慣」を表象するものとして扱うべきである。


この視点は、単純な形態分類(形だけの分類)と 機能的・歴史的タイプ(functional/historical types) を峻別する議論へとつながる。Krieger は、機能的あるいは歴史的意味をもったタイプの方が、遺跡分布や時相分析において有用であると論じた。






4)タイプ設定の手続きと診断モード(diagnostic modes)

Krieger はさらに実務的な指針を提示する。タイプを決める際には 「診断モード(diagnostic modes)」 と呼べる、いくつかの特徴(modes)を選び、それらの組み合わせによってタイプを定義する方式を勧める。これには次の含意がある。

  • 複数の属性(形状、装飾、素材、技法、表面仕上げなど)を用いて型の診断基準を定める。

  • 診断モードはその研究目的に合わせて選ばれるべきで、時間的な系列を追うのか、機能差を明らかにするのかによって選択基準が異なる。

  • 診断モードの選択がタイプの歴史的妥当性(たとえば時系列に沿った単調な分布を示すかどうか)を左右するため、モード選定は透明に示す必要がある。

この「診断モード」概念は、後の「形式的型認識(formal typology)」や「診断的属性選択」の理論的基礎になっていく。






5)型と年代推定(seriation)との関係

Krieger は型の時空分布を用いた年代推定(seriation)についても言及する。特に歴史的タイプ(historical types)を用いると、型の出現頻度が時間軸上で連続的・単調的に変化することが期待され、それが年代推定の根拠となりうる。だが重要なのは、その単調性はタイプ定義と診断モードの選択に依存するという点である。誤った診断モードを選べば、仮に見かけ上の型があっても年代的整合性は崩れる可能性がある。






6)型概念の哲学的・方法論的含意と限界

Krieger はまた、タイプ概念の限界についても率直に論じる。型は「分析者による構築物(analytical construct)」である面をもつが、それが「まったく任意」となってはならない。つまり、

  • タイプはデータに基づく客観的信頼性を持つべきで、選定方法は記述されて検証可能であること。

  • 型が文化的単位であるという主張をするならば、それを支持するエビデンス(分布の一貫性、関連機能の有無、技法の一貫性など)を示すべきである。

こうした自己批判的態度は、タイプの恣意性を減らし、分類を歴史的解釈へつなげるために不可欠だとKriegerは考えた。





7)実践上の例示(論文内での参照事例)

論文中では複数の地域例や遺物群が参照され、タイプ概念の運用—どの診断モードを選ぶか、どのようにタイプを定義するか—が具体的に議論される(例えばカリフォルニアやカリブ地域などの研究引用)。Krieger は経験的事例を用いて、どのような場合に機能的/歴史的タイプが有効に働くかを示している。




8)総括的主張

Krieger の結論は要約すれば次のようになる。

  • 「type」は考古学的説明にとって中心概念であり、それを曖昧に運用することは許されない。

  • タイプは単なる記述的ラベルではなく、可能な限り「文化的実践の単位」として定義されるべきである。

  • タイプの定義(診断モード選択)は研究目的に適合し、かつ透明で検証可能な手続きに基づくべきである。




📰あるけまや流まとめ

私はクリーガーに思い入れある感じです。好きです!(・∀・)つ

たぶん日本考古学で土器をやってれば普通にすらすら読んで理解できるかなと思います。


他方で日本考古学で一般的な属性(attribute)に対して、モード(mode)という用語を使ってるんですけれど、後の広い意味でのモード研究を考えるとその点だけ理解しづらいかなとは思います。


ただタイプとバリエーションについても書いていますので、マヤ考古学の土器分析手法として一般的なタイプ・ヴァラエティ法(Type=vriety method)を理解する上で、ちょうどクリーガーの論稿は日本考古学とアメリカ考古学、そしてマヤ考古学とにおける土器の研究・分析手法を橋渡しするような役割を果たしているのではないかと個人的に思っています。



まぁ要約を読んでみてもいまいちピンとこないとか、理解しづらい部分もあるとは思います。

ただ日本の型式学的研究法を学ぶ上で、型式論・様式論関係の論文を読んでも苦しみますからね。

土器研究者はみんなそうやって激しく苦しみながら、どこかで自分の中でのある種の線引きをしているのだと思います。

かく言う私も、かつて「日本考古学の型式論と様式論と、マヤ考古学のタイプ・ヴァラエティ法の方法論的比較」を書くに当たってそうとうやられましたからね。

もう読みたくないです!(笑)( -д-)ノ



ってことで、次回はクリーガーと前回のスパルディングの考え方の対比を行ってみようかと思いますヾ(´ω`=´ω`)ノ