2025ねん 10がつ 19にち(にちよーび、晴れ)

なんか疲れてるな~!( -д-)ノ

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今回の考古学・歴史ニュースは「ミミズ取ってたらお宝発見の続き!( ・Д・)ってお話です(*・ω・)ノ


出土したコインについて深堀しようと思ったけど、量が多いからまだ分析終わってないんでしょうね。情報全然ない!

なので大量に出土したコインをどのように分析可能か、そしてどのようなことが分かるのかをまとめてみました!


↓前回の記事




📰はじめに


── 釣り餌を採っていたら世界史の穴を突いた日。鍋に詰まった銀貨の束は、ただの「お宝話」ではなく、中世の経済、流通、鋳造技術、そして人々の暮らしへと続く道しるべだ。──


ミミズ取りの道具が叩いたのは、ただの石ではなく、朽ちかけた銅の鍋──その蓋を開けると、ぎっしり詰まった銀貨と装身具が現れた。見つかったのは「重さ約6kg、最大で約2万枚に及ぶ可能性もある」大量のコインであり、それらの多くは12世紀頃のものである。なかには“KANUTUS(クヌート)”の名が刻まれるコインも含まれる。これは単なるロマンではなく、まとまった貨幣塊(hoard)が私たちに「鋳造・流通・埋蔵」という複合的な歴史問題を解析する機会を与える。


以下は、“銀貨の打刻分析(die analysis)・装飾品の様式比較”を中心に、考古学的・媒質分析的・史料学的観点から深掘りした特別解説です。専門用語は噛み砕いて説明します。





🧭 発見の概要と最初に押さえるべき事実

まず確かな点を整理すると:発見地点はストックホルム郡の別荘地周辺、発見者は釣り餌(ミミズ)採集中の男性。鍋状容器に納められた銀貨と装飾品の総重量は約6kgで、現場は直ちに管轄の文化財当局へ届けられた。


初期鑑定は多くのコインが12世紀前後とする。こうしたまとまった量のhoardは、当該地域・時代の経済史研究にとって重大な一次資料となる。



🛠 銀貨の打刻分析(die analysis) — どこを見れば何が分かるか

打刻分析の目的は、(A)同一の打刻(die)を用いたコイン群を特定して鋳造ロットや鋳造所の規模を推定する、(B)偽物(近代の模造)を識別する、(C)鋳造順序や再鋳(recoinage)の痕跡を推定することにあります。

1) 打刻痕の形態学的比較

コインの表裏に残る微細な彫刻(顔貌、王名、十字、司教像など)の相似性を画像解析で比較すると、同一ダイス(打刻型)から打たれたコイン群がクラスタ化されます。これが何十〜何百の“鋳造ロット”に分かれているかを示す重要な指標になります(同一ダイスが大量に使われていれば中央集権的な貨幣鋳造、分散的なら地方鋳造の手がかり)。打刻の欠損パターン(クラックや打ち直し痕)も同一性の指標に有効です。


2) ダイス(打刻型)そのものの発見と鑑別

稀に打刻型(bronze/iron dies)が出土することがあり、それが出れば鋳造現場を直接推定できます。出土しない場合でも、打刻の摩耗度、衝突痕、装飾の様式差から複数の鋳造所・時期を逆算できます。打刻比較は定性的な専門家の目検と定量的な画像解析(縁の曲がり、文字のプロファイル、ノイズ・パターンの類似度)を併用するのが現在のベストプラクティス。


3) 打刻分析の現代的手法

高解像の顕微撮影+自動マッチングアルゴリズム(特徴点マッチング)で、何千枚というコインから“同一打刻群”を高速で抽出可能。これにより、どのコインが同じダイスから打たれたかを統計的に示し、鋳造の組織(王室鋳造所か地方鋳造か、短期か長期にわたる連続鋳造か)を推定します。






⚗ 金属組成と同位体分析 — 銀の“出自”を追う方法

コインが「どの鉱山の銀を使っているか」を知ると、遠域交易や銀のリサイクル慣習が見えてきます。代表的手法は次の通りです。

1) XRF(X線蛍光)とEDXRF — 非破壊で合金成分を読む

ED-XRFやポータブルXRFは表層の元素組成(Ag %, Cu %, Pb など)を非破壊で測定できます。これは大量のコインを素早くスクリーニングするのに最適で、銀の純度分布や含有鉛(Pb)量のばらつきから“混合銀(recycled silver)”の度合いを推定できます。


2) Pb 同位体分析(破壊的だが高精度)

微量の破片試料を採取してPb同位体比を測ると、鉱山起源をかなり絞り込めます。中世北欧の場合、西欧・バルト・イスラム世界の銀が混在した例が知られており、鉱山起源の判別は流通経路の解明に直結します(例:イスラム世界のプラチナ級銀が再流通したケースなど)。


3) 銀のリサイクル痕と「新鋳」か「再鋳」か

中世では銀の回収・溶解・再鋳が一般的でした。合金の微量元素パターンや表面酸化物の性状から、新鋳(freshly minted)なのか、再利用材を混ぜたかを判定できます。銀貨群が均質なら単一供給源、ばらつくなら複合供給(交易+リサイクル)の証左です。





🧾 装飾品(指輪・ペンダント・ビーズ)の様式比較 — 社会的メッセージを読む

コイン以外に出土した装飾品群は、hoardの「文化的顔」を示します。装飾の技法(ねじり線、象嵌、ちょうつがい式のブローチ)や金銀の比率、宝石(ガーネット等)の有無は、所有者の社会的地位、交易圏、宗教的嗜好を物語ります。

  • 様式学的比較:出土ブローチやペンダントの形状を既知の王国・領域の型式(例:ハンザ地域、ゲルマン系、バルト海地域、英仏圏)と比較することで、流入経路や文化的影響が推定できます。

  • 製作技術の示唆:鋳造か板金加工か、金属表面の鍍金(ギルディング)痕、宝石の留め方は工房技術レベルを反映します。工房の所在を突き止めれば、hoardの所有者層がより明確になります。

装飾品のスタイルはコインと並んで「hoardがどの文化圏に属するか」「どんな人が埋めたか」を示す決定打になり得ます。





🔗 史的コンテクスト:なぜ埋められたのか(仮説群)

大量の貨幣と装飾が一度に埋められる理由は複数考えられる。代表的な仮説を挙げます。

  1. 戦乱・略奪の避難:戦いや略奪が迫った際、持ち主が財を地中に隠した。

  2. 商人の一時保管:長距離交易の中継地点で商人が保管し、帰還前に回収できなかった。

  3. 宗教的・埋納的行為:宗教的贈与や儀礼的埋納の可能性(ただし大量のコインは経済的な動機が高い)。

  4. 通貨再鋳・停止の痕:王権の変動で貨幣体制が崩れ、鋳造所が停止した結果、貨幣が流通停止状態に。

各仮説の優劣は、遺物の組成(貨幣とジュエリーの比率)、周辺に遺構(人家・商業地・防衛施設)があるか、埋蔵の深さと層位から判断される。





🧩 研究の手順(現場から論文までのロードマップ)

  1. 現場記録とコンテキスト記録:GPS、層位、周辺遺物の発掘と記録(写真・3Dスキャン)。

  2. 初期選別と保存処置:腐食した銀の機械的清掃は慎重に—腐食層を壊すと情報を失う。保存処理は専門家の管理下で。

  3. 大量コインのスクリーニング:ポータブルXRFで素早く組成分布を測定。

  4. ダイス/打刻のデータ化:高解像度顕微写真を取り、画像マッチングで同一ダイス群を抽出。

  5. 代表サンプルの破壊分析:Pb同位体や微量元素分析(ICP-MS等)で起源を特定。

  6. 史料学的照合:写本・年表・徴税記録と照合し、コイン刻印と統治者名(例:KANUTUS)を突き合わせる。

  7. 最終報告と公開:学術論文・カタログ作成、博物館展示用の保護処理。




おわりに

理化学分析って難しい印象も受けますが、考古学者はお金出すだけで基本的にお任せしますからね(笑) そうして得られたデータを基に、コインの分類とカウントを通して、簡単に書くと以下のようなことが分かってきます。
  • 「どの鉱山の銀が混じっているのか?」→ 流通圏の輪郭が描ける。

  • 「何枚が同一ダイス群に属するか?」→ 鋳造の組織と時間幅がわかる。

  • 「装飾品はどこで作られたのか?」→ 物的文化と社会階層が見える。

考古学は物的証拠を扱う学問なので、一つの発見で”歴史記述 / 解釈”が劇的に書き換わることがあります。


ミミズ掘りで見つかったこの「6kg」の塊は、数年にわたる分析と議論を通じて、中世の貨幣流通史、地域交流、そして人々の暮らしを私たちに語り直してくれるはずです。




何はともあれ、

私も研究したくなってきた!( ・Д・)



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