2025ねん 10がつ 20にち(げつよーび、雨)

今晩たくさんマヤ文字書いて作業貯金をつくりたい!( ・Д・)

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↑数理的なイメージ!?( ・Д・)



今回はリードの数学的人類学ってこんな感じ!( ・Д・)ってお話です(*・ω・)ノ

*最後にコメントがあるよ!(*^・ェ・)ノ


いきなり新しくなっちゃったけれど、何だか早く私の研究紹介もしたいなって思ったので、近年の考古学関連の数理的研究を紹介します!



はじめに

Dwight W. Read は、数学(抽象代数)を学んだのちに人類学・民族学の領域へ転じ、「文化構成要素(文化的な規範・親族用語・分類体系など)を数学的にモデル化できる」という視座を一貫して提示してきた研究者です。 

「数学的人類学(mathematical anthropology)」というラベルが語るように、彼の研究は「文化とは定性的記述の対象だけではなく、数学モデル・形式的構造の対象になりうる」という立場を採っています。

この枠組みは、20世紀後半の数理考古学・計量人類学の発展と重なっており、文化・物質・制度の三者を数学モデルで結びつけようとした点で注目に値します。



研究の背景と動機

Read の動機を整理すると、おおまかに以下のような観点からです:

  1. 文化構成要素の普遍構造志向
     彼は、親族用語・婚姻制度・分類体系・遺物型など、「社会文化の構成要素」が言語・地域・民族を超えて繰り返し出現するという仮説を持っていました。これらを形式的構造として捉え、「数学的構造(algebraic/graph-theoretic)として記述可能ではないか」を探求しました。

  2. 形式モデルと文化変化の橋渡し
     文化変化・技術変遷・制度変化を記述するためには、「何らかのモデル」が必要とされてきました。Read は、数理モデル(たとえば代数的記号系、行列、モデル‐シミュレーション)を用いることで、文化構造そのものを「動きうる構造体(structures in motion)」として扱おうとしました。

  3. 人類学・考古学における数量化・形式化志向との接続
     20世紀後半、考古学・人類学ともに「定量化」「計量化」「モデル化」への転換期にありました。Read の志向は、タイプ論争・定量考古学・数理人類学が提示した手法と並行・また先駆していた面があります。


主たる論考の構成と内容

以下はいくつかの代表的論考に基づいて、Read の「数学的人類学」がどのような構成になっていたかを整理します。

(A) モデル化と文化の構成要素

Read は「文化的構成要素(例えば親族用語体系、分類語、技法的特徴など)が、数学的に捉えられる形式を持っている」と主張しました。たとえば、ある親族用語体系を「代数的演算(kin‐term algebra)」として捉え、用語間の合成・結び付き・制約を記号論的にモデル化しようと試みています。これにより、文化的用語・制度を「数理モデルの変数」あるいは「構造方程式の変数」へと変換する試みがなされました。

例えば、「クロスカズン婚 (cross‐cousin marriage)」を持つ親族体系を、代数的に “merge”/“bifurcate” といった演算規則で記述することで、変化の軌跡・系統・構造パターンの分析を可能にしようという志向があったことが、Read の後年の論文からも見て取れます。

このようなモデル化において彼が強調する点は、「文化的構成要素そのものが偶然の集合ではなく、論理的・数学的に規定可能な構造を持ちうる」という点です。そのためには、属性・演算・構造・制約という数学モデルの基本要素を文化現象に適用する必要があります。


(B) 数理モデルの方法論的課題

Read は同時に、数理モデルを使う際に陥りがちな誤りや限界にも注意を向けています。たとえば次のような点です:

  • モデルがあまりに単純すぎて文化の複雑性を無視する危険。

  • 属性選定・モデルの仮定(パラメータ・演算規則)などが恣意的になりうる点。

  • モデル化された構造がその文化集団にとって意味を持っているか否か(=モデルの妥当性)を検証するプロセスの欠如

    このような課題を Read は論文「Some Comments on the Use of Mathematical Models in Anthropology(2017)」で整理しており、数学モデルを人類学に導入するための方法論的枠組みを提示しています。


(C) 応用例と展開

Read の数理人類学的アプローチは、以下のような領域に応用されてきました:

  • 親族体系の代数的分析:親族用語・結婚ルール・系統構造を数理的記号系で分析。例えば “The Generative Logic of Dravidian Language Terminologies” という論文では、分類体系を数理的に記述しています。

  • 社会‐人口モデル・シミュレーション:文化知識・決定モデル・人口動態を統合するエージェント・シミュレーション研究も行われています。

  • 考古論との接点:遺物分類・形式分析・クラスタリングと数理モデルの交差点において、「文化構造を数理モデルで捉える」試みとして位置づけられています。




理論的意義・位置づけ

Read の「数学的人類学」は、次のような意味を持ちます:

  • 文化・物質・制度という異なるレベルの分析対象を、「数理モデルを介して」統一的に捉えようとする試み。

  • 考古学・人類学・民族学における形式化・モデル化・定量化志向の一環として、タイプ論争・定量考古学の流れに連なる視座を示す。

  • また、研究者が分類・モデル構築を行う際の理論的・方法論的反省を促すものであり、「モデルを使えばすべて説明できる」という安易な立場への批判的な警告をも含んでいます。



制約・今後の課題

  • 数理モデルの普及・適用は進んでいるものの、モデルが提示する構造と「過去社会あるいは文化的実践が実際にどうだったか」とのギャップを埋める検証が常に十分とは言えません。

  • 数理モデル化が進むことで、逆に「意味・価値・文化内的視点」が疎外されるという批判も根強く、Read 自身もその点を認識しています。




✏️ まとめ

Dwight W. Read の「数学的人類学(Mathematical Anthropology)」というテーマは、文化を単なる質的対象としてではなく、数理モデルの対象として捉えるという、比較的少数派ながらも強力な視座を提供しています。考古学・人類学・民族学の境界領域において、「構造」「モデル」「数学」というキーワードを媒介に、文化・制度・物質をつなごうとする試みであり、「数理考古学」「定量文化史」「文化進化論」の流れにとっても重要な位置を占めています。





あるけまや流コメント

やはり近年の数理考古学や人類学等々における研究は、応用数学分野や物理学分野を専門とする研究者の流入が多いなと思います。

経済学や社会学でも同様の現象が起きてますし、ちなみに日本考古学においても数理考古学で有名なのは応用数学の先生ですね。



リードの研究も面白いし、言ってることも至極まっとうと思うんですよ。



けど、私としてはやっぱどこか別分野の人だなって感じがしてしまう( -д-)ノ



別分野の研究者の参入自体は問題ないとは思いますが、数理考古学の立場を考古学分野においてより強固とするには、そして定量的研究と定性的研究とで相互補完的研究を行う上で、考古学者自体が立ち上がらないとダメだと思うんですよね。

他分野の彼らに任せれば任せるほど、後になったらもう考古学者には検証もできないほどに難解な数的理論が立ち上がってしまうでしょう。

そして”伝統的”考古学者は言うのです、「世界はもっと『複雑』である」と。




これがまさしく私が今既に、日本の考古学の学会で言われていることですけれど、考古学者自身が自分たちで理解できる範囲で出来る限りシンプルな数式を使ってモデル化していくことが大事だと思います。

そうでなければ近い将来の数理考古学は考古学者の学問ではなく、数学者や物理学者の学問になってしまうでしょう(*^・ェ・)ノ