2025ねん 10がつ 22にち(すいよーび、雨)

最近首も痛い!( ・Д・)

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↑数理的なイメージ!?( ・Д・)




今回は「血縁関係を数的に表現してみた!( ・Д・)ってお話です(*・ω・)ノ

*最後にコメントがあるよ!(*^・ェ・)ノ



Woodrow W. Denham(2012)“Kinship, Marriage and Age in Aboriginal Australia” — 要約と考察

1. 概要と背景

Woodrow (W. W.) Denham は、長年にわたりオーストラリア先住民(とくに Central Australia の Alyawarra / Alyawarr)に関する親族・婚姻・年齢制度のフィールド資料を蓄積し、それらを形式的・数理的観点から再分析してきた研究者です。


2012 年に Mathematical Anthropology and Cultural Theory(以下 MACT)誌に発表した “Kinship, Marriage and Age in Aboriginal Australia”(Vol.4 No.1)は、Alyawarra を中心とした複数の中央豪州社会に関する豊富な一次データを土台に、親族語、婚姻ネットワーク、年齢構造の複雑な相互作用を論理的かつ形式的に記述しようとする野心的な試みです。本文は膨大なデータ表・系図・図(親族関係図、婚姻網図)を含み、文化的実践の構造性(structure)と動態(dynamics)を数理的に把握するための素材と分析視角を提供します。

この論文は単なる記述論文ではなく、「文化制度を形式的(modelable)に扱う」 という立場に立ち、親族・婚姻・年齢がどのようにして(a)社会の持続性を支え、(b)集団間の接触・拡散を媒介し、(c)出生・養育・再生産のパターンを決定するかを論じます。Denham はまた、古典的な kinship theory(例えば Lévi-Strauss, Fortes らの構造主義的/機能主義的記述)や、その後の数学的人類学の議論(数理表現の可能性)とも対話的に論を進めます。




2. 研究目的と主要な問い

Denham の本論文は、次の主要問いを軸に構成されています。

  1. Alyawarra 社会における親族呼称・婚姻規則・年齢構造は、どのような機構(ルール)で結びついているのか?

  2. これらの制度的ルールは、個々の婚姻選択・子育て(alloparenting)・居住(residential composition)にどのように影響するのか?

  3. これらの関係性は数学的(形式的)な記述に耐えうるか、またどのようなモデル化が可能か?

これらの問いに答えるため、Denham はフィールドデータの量的処理(親族呼称の符号化、婚姻事例の集計、年代・年齢データの整理)と、図解的/論理的な構成(世代構造のヘリカル表現、社会間リンクのスキーマ)を併用しています。






3. データと方法

データ:1960〜70年代にかけてのフィールド・ノートや系譜情報を基に、Alyawarra の結婚事例・親族呼称表・年齢階層を整理。Denham は膨大な個票(個人レベルの婚姻・出生・居住記録)をコーディングしており、学術誌本文だけでも多数の図表を添付しています(補助資料やデータセットはアーカイブ/データベースにも登録されている)。



手法(アプローチ)

  • 親族呼称(kin terms)を“機能的カテゴリ”として符号化し、誰が誰に対してどの用語を用いるかを関係式として整理。

  • 婚姻の“接点”を社会間ネットワークとして可視化(言語集団・居住場所・年齢差などを軸にした婚姻リンク図)。

  • 年代・世代構成を“螺旋(helical)”的に図式化し、世代交代と婚姻規則(exogamy / endogamy)がどのように連鎖するかを示す。

  • これらを踏まえて、形式記述(ルール記述)と説明的仮説(なぜその婚姻パターンが維持されるか)を提示。

Denham はまた「開かれた系(openness)」と「閉じた系(closure)」という対概念を使い、Alyawarra 社会が局所的には閉じた親族語基盤を持ちながらも、婚姻ネットワークの階層性により広域的な結合(大陸規模の“small-world”な連結)を持つことを示します。これにより「一見閉じて見える制度が、実は広域的に開かれている」ことの説明を図式的に与えています。





4. 主張と発見(要点)

Denham の論文は多くの発見的観察を含みますが、主要な主張を整理すると次のようになります。

A. 親族呼称と婚姻ルールは単なる“ラベル”ではなく、社会的実践を決定づける演算ルールである

Denham は、親族呼称体系(誰をどう呼ぶか)が婚姻適格性、世代差の把握、育児(alloparenting)責任の分配に直接かかわることを示します。呼称の使い分けは社会的役割の期待を符号化しており、これを形式的に記述すれば制度的機能が明示される――という立場です。

B. 年齢・世代の制度化(generation moieties)は婚姻パターンを安定化させるメカニズムである

Denham は世代や age-grades に関する制度(世代モイエティなど)を分析し、それらが婚姻の周期性・適齢・exogamy(外婚)ルールと結びつくことで、集団が系統的に開閉を繰り返す構造を作ると論じます。これにより人口動態的ショックを吸収し、遺伝的・社会的多様性を保つシステム的効果が示唆されます。

C. 地域的“開放性(openness)”と“閉鎖性(closure)”の両立

表面的な用語や局所的婚姻規則は閉鎖的に見える一方で、婚姻のネットワーク構造(異言語集団との結びつき、居住移動パターン)を見ると、実際には集団間に“弱い紐帯(weak ties)”が多数存在し、全体としては結びつきが強い(small-world 化)ことが明らかになります。つまり制度上の“閉じる”ルールが、実際の社会的ダイナミクスでは“開く”構造を生む、という逆説的洞察が得られます。

D. モデル化可能性と限界の提示

Denham は、これらの構造を(理論的には)数学的にモデル化可能だと主張しますが、同時にモデル化の難しさ(膨大なデータ、特殊ケース、文化内の意味の読み取りの難しさ)も率直に認めています。「関係は数学モデルに適するが、そのモデル化にはさらなる作業・別の専門能力・長い時間が必要だ」と述べ、モデル化を達成するための現実的ハードルを提示します。






5. 論文の方法論的貢献

Denham の仕事は、次の点で方法論的に貢献します。

  1. 大量一次データの整備と公開 — Alyawarra に関する膨大な婚姻・親族・居住データを整理し、研究共同体が再利用可能な形で提示している(データセット記載あり)。

  2. 親族・婚姻の“図式化”手法 — 世代のヘリカル図・婚姻ネットワーク図など、視覚化ツールを用いて複雑な制度を直感的に把握できる方法を示した。

  3. 形式記述(formal description)とモデル化の青写真 — 文化ルールを変数・演算・制約の組み合わせとして書くことの有効性を示し、後続の数学的人類学・エージェントベース・シミュレーション研究への橋渡しを行った。





6. 学術的反響と議論点

Denham の一連の論考(2012–2015 にかけて MACT に複数寄稿)は、同領域の研究者たちから多数のコメント・反論・データ補充を誘発しています。Peter Sutton らによるクロスコメントや、地域別の婚姻率データを持ち出した実証的な補足が知られており、Denham の『閉鎖の虚構(fictions of closure)を超えて』という命題は活発に議論されました。いくつかの批判点は次の通りです(意見の要約):

  • 解釈の過度の一般化に対する懸念:Alyawarra の結果を他のアボリジニ社会や世界の親族制度へ普遍的に拡張するには注意が必要。

  • データの取り扱いと方法の透明性:データのコード化・変数選択・処理手順の詳細を求める声(再現性の観点)。

  • モデル化と意味論の分離に対する批判:形式化は有用だが、文化内的な意味(emic perspective)を疎外しかねないという批判もある。

これらの議論はむしろ建設的で、Denham 自身も議論に対して応答や追加データの提示を行っています(同誌上のやり取り・クロスコメント群)。






7. 考古学・数理考古学への含意

Denham の親族・婚姻の形式化研究は、考古学(特に数理考古学・文化進化論)に対して次のような示唆を与えます。

  • 制度と物質文化のリンク:親族・婚姻ルールは居住パターンや交換ネットワークを通じて物質文化(遺物の流通や技術伝播)に影響を与えるため、制度モデルは物質変化モデルと統合可能。

  • ネットワーク的視座:婚姻ネットワークの small-world 構造は、遺物や技術の拡散モデル(拡散確率・ネットワーク中心性)と直接対応するため、考古学的拡散モデルを制度的に裏付けることができる。

  • モデル化手法の共有:親族モデルで用いられた図式化・演算的記述・シミュレーション手法は、考古学データ(遺跡間の婚姻に相当する交換関係や道具の伝播)にも応用しやすい。



8. 結論(総括)

Denham(2012)の “Kinship, Marriage and Age in Aboriginal Australia” は、豊富なフィールド素材を基にして親族・婚姻・年齢制度の複雑な相互作用を丁寧に描き出し、その構造性を数学的・形式的に記述可能であることを実証的に示した重要な論考です。


Denham はモデル化の可能性を力強く主張すると同時に、方法論的限界や文化的意味の取り扱いに関する慎重な姿勢も示しており、現代の数理考古学・文化進化論と建設的に交差する知的資源を提供しています。





あるけまや的コメント

今回はまたもや比較的新しい時期の論文なのです。論文紹介しながら自分の研究の役にも立ったらなぁと選んでみました。

Denhamが結構な数の論文を投稿している雑誌が「Mathematical Anthropology and Cultural Theory」
なんですけども、私ほとんど読んだことないと思います。




名前は知ってる気がするので読んでるのかも知れないけれど、研究者名と大体の出版年とタイトルの一部で覚えてるので、超有名誌以外あまり記憶ないんですよね( -д-)ノ

せっかくの出会いなのでこれを機に、「Mathematical Anthropology and Cultural Theory」の論文を片っ端から読んでまとめてみようかなと思います!ヾ(´ω`=´ω`)ノ




さて、人類学系の研究、それが数理研究であっても「血縁関係とか親族関係」の研究大好きですよね。考古学だと旧石器時代が大人気。

絶対、国家形成とか通時的な研究の方が面白いのに!( ・Д・)

まぁテーマが壮大なものになるし、その分多くの敵を作るからかな、、、だから私の周りは敵しかいないのか( ・Д・)




結局のところ、血縁関係の数理的研究は古くからあるけれど、これまでと何がどう違うのかよく分らんのですよね。

私が興味ない世界だからかな(笑)

特殊な状況を除けば、血縁関係とかって考古学だとなかなか分からないからね。ティカルでも一部は分かっているけれど、やはり社会全体に拡張はできない。



だから結局普遍性の問題にぶつかると思う。

Denhamの研究も建設的批判を受けているように(建設的なだけいいよね( ・Д・))、普遍性が問題に
なってるしね。




厳しい言い方をするならば、

せっかく数理手法を使って、複雑な現象を単純化することで一定量有用なモデルを構築しているのに、それが普遍的なルールじゃなければ一体どんな意味があるんだろう?と思ってしまう。



私が考古学者だからかもしれない。

遺物(型式)データを集めて、いい感じにプロットさえすれば、自然と数式(近似式)は得られるんだけれど、それはひとつの現象記述でしかない。そういう感覚があるからかもしれない。



まぁ最大の要因は私の人類学に対する無知だと思うけど( -д-)ノ

ってことで次回以降、「Mathematical Anthropology and Cultural Theory」を取り扱っていこうかなと思う。興味あるもの、もっと私の研究『物質文化マクロ生態学』に影響を与えるものを見つけたらそれを取り上げようかな!(*・ω・)ノ