2025ねん 10がつ 23にち(もくよーび、くもり)

今月の中で来週4日間のみ研究できる!ヽ(TдT)ノ

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↑数理的なイメージ!?( ・Д・)




今回は「血縁関係を数的に表現してみた!( ・Д・)ってお話です(*・ω・)ノ

*最後にコメントがあるよ!(*^・ェ・)ノ




Analysis of Kinship Relations with Pajek」(Batagelj & Mrvar 2008)



📰はじめに

社会を「つながり」の集合として見たとき、親族関係とはもっとも基本的で、かつ最も複雑なネットワークのひとつです。 Vladimir Batagelj と Andrej Mrvar の論文「Analysis of Kinship Relations with Pajek」は、この〈人と人との結びつき〉を、数理的に描き出す試みです。使用されるツールは、ネットワーク解析ソフト Pajek(パイエク)。もともと社会関係分析や情報ネットワーク研究で知られるこのツールを、親族関係の可視化と構造的理解に応用したのが本研究の特徴です。



🕸️ 親族を「ネットワーク」として見る

Batagelj & Mrvar の出発点は、親族を血縁や婚姻による連鎖関係としてではなく、ノード(個人)とエッジ(関係)の集合体として扱うという視点です。ノードは個々の人物、エッジは「親」「子」「兄弟」「婚姻」などの関係を表します。これらをグラフ理論の形式で整理することで、親族構造の複雑さを定量的に分析できるのです。


Pajekでは、数百から数千単位のノードを扱うことが可能であり、例えば一つの部族や村落全体の婚姻ネットワークを構築することもできます。ここで重要なのは、可視化と構造分析の両立です。単に家系図を描くのではなく、どの人物がネットワークの中心に位置し、どの関係が集団の分節を生むのかを数理的に抽出します。





📊 構造分析の手法:中心性・クラスター・パス

論文では、ネットワーク科学で一般的に用いられる指標を親族関係に適用しています。

  • 次数中心性(Degree centrality):多くの親族関係をもつ個人を特定し、社会的ハブを抽出。

  • 媒介中心性(Betweenness centrality):異なる親族集団をつなぐ「橋渡し役」を発見。

  • クラスター分析:婚姻や血縁のつながりによって形成されるサブグループを明確化。

  • パス解析:親族を介した関係の「距離」や「世代間の連鎖」を数量化。

こうした分析により、従来の家系図が示しにくかった「社会的構造としての親族ネットワーク」が浮かび上がります。たとえば、ある個人が直接血縁をもたない複数の集団を仲介している場合、それが社会的統合や交換関係のキーになることがわかるのです。




🧭 Pajekの機能と親族データへの適用

Pajekは、複雑なネットワークを効率的に扱うための可視化・統計ツールです。論文では、親族関係を入力する際の具体的なデータ構造が示されています。各ノードにはID(個人名や番号)が与えられ、エッジには関係タイプ(親子・婚姻など)がラベルとして付与されます。


解析のプロセスは次のような流れです:

  1. データ整形(親族関係のテキスト情報をネットワーク形式に変換)

  2. ネットワーク生成(Pajek形式でノードとエッジを入力)

  3. 可視化と色分け(性別・家系・婚姻グループなどで表示を区分)

  4. 統計的分析(中心性・分布・サブグループ検出)

著者たちは、特に大規模親族データに対して、Pajekのスケーラビリティが有効であることを強調しています。Excelや通常の家系図ソフトでは困難な規模の関係群を一望し、その上で数理的指標を算出できる点が、本手法の強みです。




🧩 文化・社会人類学への示唆

Batagelj & Mrvar の論文は単なる技術報告にとどまりません。彼らは、親族を「文化的ネットワーク」として捉える枠組みを提示し、社会構造・婚姻戦略・居住パターンの理解へと応用する可能性を示しています。特に注目されるのは、「関係のパターンが文化的規範を反映する」という洞察です。

例えば、父系社会では男性ノード間のリンク密度が高く、母系社会では婚姻リンクが複雑化する、といった構造的差異が、数理的に可視化されるのです。こうした分析は、単に人類学的モデルの検証だけでなく、歴史社会の再構成にも貢献しうると考えられます。




🪶 考古学・物質文化研究への応用

この研究は、物質文化の分布や交換ネットワークを分析する上でも強い示唆を与えます。考古学における遺物や財は、人々の社会関係の痕跡を反映しており、それらをノードとリンクで構成すれば、「財のネットワーク」として親族関係ネットワークと類比的に扱うことができます。




🔍 まとめ:関係の科学としての親族研究

Batagelj & Mrvar (2008) の「Analysis of Kinship Relations with Pajek」は、親族という古典的テーマを最新のネットワーク科学の枠組みで再解釈した研究です。彼らのアプローチは、単なる可視化ではなく、「関係の構造そのものをデータ化」する方向を切り拓きました。


考古学や文化進化論の分野でも、こうしたネットワーク的思考はますます重要になっています。社会的結びつきの構造が、財や技術の分布、さらには文化の進化を形づくる――その数理的理解への第一歩として、この論文は今もなお示唆に富む成果といえるでしょう。






あるけまや流コメント


Batagelj & Mrvar の方法は、「物質文化のマクロ生態学」において、財の流通・技術の伝播・交換圏の構造を分析するための数学的基盤になりうるとは思います。



そういう意味で面白い論文だなとは思います。ただ実際にはティカルにおける様々な財の分布式をつくり、更にはそれらの時系列データを取得し、碑文学研究成果を考慮した歴史解釈を属性とした進化式を作って財の分布式の変化の理由を紐解く、ここまでがワンセット。

更には遺跡間で比較する必要があり、ティカルを中心とした遺跡の大小サイズそれぞれで比較し、遠方に所在する比較的ティカルと関係性の薄い遺跡の大小サイズそれぞれで比較し、カラクムルを中心とした敵国の遺跡の大小サイズそれぞれで比較する、ここまで別セット。

最初のセットか次のセット時に財の基本分布とその変化から財の種別を分類し、財の社会不均衡分布に関する法則性を見出すが第3段階。

その法則性に関してより詳細に分析する上で財と財の諸関係を明らかにする上で今回のネットワーク分析が有用、、、って感じですかね。



なので研究計画としてはかなり先の話、ないし、私の人生終わっちゃいそうなので誰かに任せるかも知れないけれど、面白い論文だな~って思います。

さて、どんどん数理考古学関連の研究史をまとめていくぜ(*^・ェ・)ノ