
📰はじめに
前回は、ティカルの住居群を使って「経済指標ランキング」を作ったところまでの話だった。
建造物グループの総面積を計算して、
大きい順に並べる。
そして 1位から501位までのランキング を作る。
これで、都市の格差が「連続量」として見えるようになった。
でも、ここからが本番。
次の疑問が出てくる。
このランキングの形って、いったいどんな分布なんだろう?
ここでよく登場するのが、いわゆる パレート分布(冪則) だ。
今回は、その「それっぽさ」をちゃんと疑ってみる話。
📉 ランキング分布は、だいたいパレートっぽく見える
ランキングを作ると、だいたいこんな形になる。
-
上位は極端に大きい
-
途中から急激に小さくなる
-
下位には小さなものが大量に並ぶ
これ、社会科学ではよく知られている形。
富の分布
都市人口
企業規模
いろんなところで見られる。
だから考古学でも、建物サイズの分布を見ると、
「これはパレートだろう」
と言われがちだった。
実際、建築規模や投入労働量の研究では、
冪則分布がよく指摘されている。
でも、ここで一つ問題がある。
見た目がそれっぽいだけで、
本当にその分布なのかは分からない。
🧠 「それっぽい」は、科学では危険
冪則って、見た目が強い。
グラフにすると、
いかにも「自然の法則っぽい」形になる。
だから研究では、ついこうなりがち。
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グラフを書く
-
冪則っぽい
-
じゃあ冪則だろう
でも実はこれ、かなり危ない。
社会現象の分布には、
-
冪則
-
指数分布
-
混合分布
など、似た形がいくつもある。
見た目だけでは区別できないことが多い。
だから今回の研究では、
最初からこう決めている。
先に分布を決めつけない
むしろ、
複数の分布モデルを同じデータで比較する
という方法をとる。
🔬 今回比較したのは、3つのモデル
ティカルのランキングに対して、
今回の論文では 3つの分布モデル を比較している。
① パレート分布(冪則)
② 指数分布
③ 2分割モデル(冪則+指数)
冪則は、いわば
「格差が自己増殖していくタイプの分布」。
指数分布は
「強い制約の下でサイズが減衰していく分布」。
そして3つ目が今回のポイント。
分布の途中で 性質が変わるモデル
つまり、
上位は冪則っぽい
下位は指数っぽい
という構造を想定する。
📊 社会は、本当に1つの法則で動いているのか
ここが今回の論文の一番大きな問い。
社会の格差って、
-
上位
-
中位
-
下位
全部同じ法則で動いているのか?
それとも、
上位と下位では
まったく別の力が働いているのか?
もし後者なら、
社会全体を1つの分布で説明するのは無理になる。
そして実際、
モデル比較をやってみると面白いことが分かる。
⚡ 分布は「1種類」ではなかった
結論だけ先に言う。
ティカルのランキング分布は、
単一の分布モデルではうまく説明できなかった。
つまり
-
冪則だけでもダメ
-
指数だけでもダメ
分布の途中で、
構造が変わっている。
これはかなり重要なポイント。
なぜなら、
格差が「1つの仕組み」で作られているわけではない
可能性を示しているから。
🌍 都市の中には、複数の世界がある
もし分布が途中で変わるなら、
都市の中には
-
富が自己増殖する領域
-
制約で押さえ込まれる領域
みたいな、
別の力学のゾーン が存在することになる。
つまり、
都市は1つの社会じゃない。
分布空間の中に複数の社会が重なっている
そんな見方ができる。
これはMME(物質文化マクロ生態学)の視点ともつながる。
社会の階層は、
最初から箱で決まっているわけじゃない。
むしろ、
分布の中で 濃度が変わる場所 として現れる。
🔜 次回予告:格差の「見えない壁」
分布が途中で変わるということは、
その境目に
何かがあるはず。
資源?
制度?
権力?
それとも、
越えにくい 見えない経済的な壁 なのか。
次回は、この分布の境界に現れる
格差の「構造」について見ていく。
ティカルの住居の森は、
まだまだ面白いことを隠している。





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