
↑おいくら万円だったんだろうね!?( ・Д・)
今回の考古学・歴史ニュースは「イングランド南西部サマセット州の畑で、トラック運転手の金属探知機愛好家が、約1700年前の古代ローマの金の指輪を発見したぞ! しかもその発見によって住宅ローンを完済できたらしいぞ!( ・Д・)」ってお話です(*・ω・)ノ
📰 はじめに
いや、夢がある。
畑に行く。
金属探知機を使う。
何か反応がある。
掘ってみる。
出てきたのは、古代ローマの金の指輪。
そして最終的に、博物館が購入。
発見者は住宅ローン完済。
考古学ニュースなのか、一攫千金ニュースなのか、少しわからなくなる( ・Д・)
でも、この指輪はただの高価な金製品ではない。
重さ48グラム。
青灰色の石に、勝利の女神ヴィクトリアが二頭立ての戦車を操る姿が彫られている。
しかも、297枚のローマ時代コインとともに見つかった。
その年代は西暦297年ごろ。
これは、ローマ帝国支配下のブリテン島が、政治的にかなり揺れていた時代である。
つまりこの指輪は、
「すごいお宝が出ました!」
だけでなく、
ローマン・ブリテンの富裕層、動乱、信仰、権力、そして現代の文化財制度まで見せてくる資料なのだ。
🎣 発見者はトラック運転手で金属探知機愛好家
発見者は、ケビン・ミントさん。
元軍人で、トラック運転手として働きながら、趣味で金属探知をしていた人物である。
彼は、サマセット州イルミンスター近郊の畑で金属探知をしていた。
最初は、コインかブローチのようなものだと思ったらしい。
ところが掘り出してみると、それは金の指輪だった。
しかも、ただの指輪ではない。
大きい。
重い。
金がたっぷり使われている。
石には精巧な彫刻がある。
周囲にいた仲間が「俺たちは金持ちだ!」と叫んだという話もある。
まあ、気持ちはわかる。
畑から金のローマ指輪が出てきたら、そりゃ叫ぶよね( ・Д・)
💍 イルミンスター・リングとは何か
この指輪は、発見地にちなんで「イルミンスター・リング」と呼ばれている。
年代は西暦297年ごろ。
重さは48グラム。
現代の指輪として考えても、かなり重い。
しかも、指輪にはニコロと呼ばれる青灰色系の石がはめ込まれ、そこに勝利の女神ヴィクトリアが彫られている。
ヴィクトリアは翼を持つ女神で、二頭立ての戦車を操っている。
左手には鞭、右手には手綱。
戦車の車輪も表現され、馬は後脚で跳ねるように描かれている。
小さな指輪の上に、かなり豊かな場面が刻まれているわけだ。
このように、石の表面を彫り込んで図像を表す技法をインタリオという。
指輪はただ身につける装飾品ではない。
時には印章として使われ、所有者の身分や権威を示す。
つまり、この指輪は「きれいなアクセサリー」ではなく、社会的な力を持つ道具だった可能性がある。
🏛️ 勝利の女神ヴィクトリアが意味するもの
ヴィクトリアは、ローマの勝利の女神である。
ギリシア神話のニケに対応する存在としても知られる。
ローマ世界では、勝利はとても重要な概念だった。
軍事的勝利。
皇帝の勝利。
帝国の秩序。
平和の回復。
敵への勝利。
そうしたものが、ヴィクトリアの姿に重ねられた。
だから、指輪にヴィクトリアが彫られていることには意味がある。
単なる「縁起のよい女神」かもしれない。
所有者の成功や勝利を願うものかもしれない。
軍事的な地位を持つ人物の指輪だったかもしれない。
あるいは、混乱の時代に勝利と安定を求める象徴だったのかもしれない。
もちろん、所有者を断定することはできない。
でも、この図像は、この指輪が単なる日用品ではなかったことを強く示している。
🌫️ 西暦297年ごろのブリテン島は、かなり不安定だった
この指輪が埋められたと考えられる西暦297年ごろは、ローマン・ブリテンにとって重要な時期である。
3世紀のローマ帝国は、政治的にも軍事的にもかなり不安定だった。
皇帝が次々に交代し、内乱が起こり、外敵の侵入も増え、地方では独自政権のようなものが現れる。
ブリテン島でも、286年から296年にかけて、カラウシウスとアレクトゥスによる独立的な支配が起きた。
いわゆるブリテンの分離政権である。
ローマ帝国の中央から見ると、反乱政権である。
しかし現地の人びとから見ると、海賊対策、軍事、税、流通、貨幣、地域支配が絡む、かなり複雑な政治状況だったはずだ。
296年、コンスタンティウス・クロルスによってブリテンはローマ帝国へ再統合される。
そして、その直後にこの指輪とコインのまとまりが埋められた可能性がある。
つまり、イルミンスター・リングは、ローマ帝国がブリテン支配を立て直す、その境目の時代に置かれている。
これはかなり面白い。
🪙 指輪だけでなく、297枚のコインも見つかった
この指輪は、単独で見つかったわけではない。
同じ場所から、297枚のローマ時代コインも見つかっている。
つまり、これは単なる落とし物ではなく、まとまって埋められた可能性が高い。
こうしたまとまりを、ホード、つまり埋納された財のまとまりとして考えることがある。
ホードにはいろいろな理由がある。
安全のために隠した。
非常時に財産を埋めた。
後で取り戻すつもりだった。
でも戻れなかった。
あるいは、宗教的・儀礼的に捧げた。
今回の場合、研究者は、動乱の時代に隠された可能性を考えている。
つまり、所有者は指輪とコインを埋め、あとで取りに来るつもりだったのかもしれない。
でも、取りに来られなかった。
それから約1700年後、トラック運転手の金属探知機が反応した。
歴史、たまにすごい回収のされ方をする( ・Д・)
🏡 所有者は誰だったのか
では、この指輪の持ち主は誰だったのか。
これも、まだわからない。
ただし、かなり高い地位の人物だった可能性はある。
金を48グラムも使った大型の指輪。
精巧なインタリオ。
ヴィクトリアの図像。
コインのまとまり。
これらを考えると、普通の農民や庶民の持ち物とは考えにくい。
研究者は、総督、商人、大地主、あるいは地域の有力者のような人物だった可能性に触れている。
「ローマの将軍の指輪」と紹介されることもあるけれど、現時点ではそこまで断定しない方がよいと思う。
軍人だったかもしれない。
高官だったかもしれない。
大土地所有者だったかもしれない。
交易に関わる富裕層だったかもしれない。
大事なのは、この指輪が、南サマセットにローマ世界の富裕層が存在したことを強く示している点である。
🛣️ サマセットは、ローマ世界の辺境ではなかった
サマセットというと、現代の感覚ではイングランド南西部ののどかな地域という印象があるかもしれない。
でも、ローマ時代には、ここにも道路、町、農場、ヴィラ、流通、富裕層のネットワークがあった。
ローマン・ブリテンは、単にロンドンや軍事要塞だけで成り立っていたわけではない。
地方にも、ローマ風の生活を取り入れた有力者がいた。
ヴィラを持つ。
モザイクを使う。
輸入品を得る。
貨幣経済に参加する。
金や銀の装身具を持つ。
こうした人びとが、帝国の地方社会を支えていた。
イルミンスター・リングは、まさにそうした地方富裕層の世界を見せてくれる。
ローマ帝国は、中心だけでなく地方にも浸透していた。
そして、その地方の畑の下に、金の指輪とコインが眠っていたのである。
💰 住宅ローン完済という現代の物語
ここで、現代の話に戻ろう。
サウス・ウェスト・ヘリテージ・トラストは、このイルミンスター・リングとコインのまとまりを、7万8010ポンドで取得した。
日本円にすると、為替によるけれど、かなりの金額である。
このお金は、土地所有者、発見者、協力した金属探知機仲間の間で分配された。
その結果、ケビン・ミントさんは住宅ローンを完済できたという。
いや、すごい。
古代ローマの勝利の女神、現代イギリスの住宅ローンに勝利する。
ヴィクトリア、仕事しすぎである( ・Д・)
もちろん、ここだけ見ると夢のある話だ。
でも同時に、これは文化財制度がうまく働いた例でもある。
発見物が適切に報告される。
専門家が調査する。
重要文化財として扱われる。
博物館が取得する。
発見者や土地所有者にも報酬が支払われる。
そして地域の人びとが見られるようになる。
この流れがあったからこそ、指輪は個人コレクションや市場に消えず、地域の博物館へ行くことになった。
🔎 金属探知機発見の難しさ
イギリスでは、金属探知機による発見が非常に多い。
有名な財宝や埋納物も、しばしば金属探知機愛好家によって見つかっている。
これは考古学にとって、良い面も悪い面もある。
良い面は、地中の遺物が見つかること。
適切に報告されれば、考古学資料として研究できる。
地域の歴史が豊かになる。
博物館展示にもつながる。
一方で、悪い面もある。
出土状況が失われやすい。
勝手に掘られると、遺跡そのものが破壊される。
金銭的価値ばかりが注目される。
違法な持ち去りや売買が起こることもある。
だから、重要なのは制度と倫理である。
土地所有者の許可を得る。
発見物を報告する。
専門家につなぐ。
出土位置や状況を記録する。
今回の発見は、結果として地域博物館に収蔵された点で、かなり良い着地点になったと思う。
🏛️ 博物館へ行く意味
イルミンスター・リングは、最終的にサマセット博物館で展示される予定である。
しかも、その前に地域の小学校を巡回し、子どもたちがローマ時代の歴史を学ぶ機会にも使われるという。
これは、とても良い。
金の指輪は、ただ高価だから価値があるのではない。
それを見た人が、過去の社会を考える入口になるから価値がある。
なぜローマ人がサマセットにいたのか。
なぜ勝利の女神が彫られているのか。
なぜコインと一緒に埋められたのか。
なぜ持ち主は取りに戻れなかったのか。
なぜ現代の博物館がそれを守るのか。
そういう問いが生まれる。
博物館に入ることで、指輪は単なる財宝から、地域の歴史を語る資料へ変わる。
これが大事である。
🧠 MME的に見ると、これは強烈な上位財である
少しだけMME的に見ると、この指輪は明らかに上位財である。
金。
大型。
精巧な彫刻。
勝利の女神。
印章的機能。
コインのまとまりとの関係。
政治的動乱期の埋納。
これは、社会の上層に強く結びつく財だと考えられる。
ただし、面白いのは、指輪が単独ではなくコインと一緒に見つかっていることだ。
コインは、より広く流通する財である。
一方、金の大型指輪は、かなり限られた所有者に偏る財である。
つまり、このホードの中には、流通財と威信財が一緒に入っている。
現金的な価値と、身分表示的な価値が同じ場所に埋められている。
これは、その所有者が単にお金を持っていただけではなく、社会的地位や象徴的権威を持っていた可能性を示している。
一つの埋納資料の中にも、財の性格の違いが見えるのである。
📦 なぜ取りに戻らなかったのか
この手の発見で、いつも気になるのがこれである。
なぜ、持ち主は取りに戻らなかったのか。
もちろん、答えはわからない。
急に亡くなったのかもしれない。
戦乱に巻き込まれたのかもしれない。
土地を離れたのかもしれない。
埋めた場所を失念したのかもしれない。
そもそも取り戻すつもりのない奉納だったのかもしれない。
ただ、西暦297年ごろという年代を考えると、政治的な不安定さと結びつけたくなる。
ブリテンが分離政権からローマ帝国へ戻された直後。
軍事的・政治的な緊張。
富裕層の不安。
そうした状況の中で、財産を隠すことは十分ありえる。
しかし、隠した財産が戻されなかったということは、そこに何らかの断絶があったのかもしれない。
この指輪は、輝いている。
でも、その背景には、誰かが戻れなかった物語がある。
そこが少し切ない。
✨ おわりに
今回のイルミンスター・リングは、いかにもニュース向きである。
畑。
金属探知機。
トラック運転手。
古代ローマの金の指輪。
住宅ローン完済。
これだけでも、かなり強い。
でも、考古学的に見ると、それ以上に面白い。
勝利の女神ヴィクトリアが刻まれた指輪。
297枚のローマコイン。
西暦297年ごろという動乱直後の年代。
ローマン・ブリテンの富裕層。
地方社会の交易と富。
そして、現代の博物館と文化財制度。
一つの金の指輪が、古代と現代をつないでいる。
古代の所有者は、危機の中でこの指輪を埋めたのかもしれない。
現代の発見者は、それを掘り出して住宅ローンを完済した。
そして指輪は、最終的に地域の博物館へ行き、子どもたちにローマ時代の歴史を語ることになった。
古代ローマの勝利の女神は、1700年後に、まさか住宅ローンと地域教育に関わるとは思っていなかっただろう。
でも、それが考古学の面白いところである。
モノは、時代を越えて意味を変える。
持ち主の権威を示した指輪が、隠された財産になり、畑の下の沈黙になり、発見者の人生を少し変え、博物館の展示品になる。
イルミンスター・リング。
小さな指輪なのに、話が大きすぎるぞ( ・Д・)
何はともあれ……
日本円で約1700万円だってさ!( ・Д・)








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