2018ねん 5がつ 1にち(かよーび、晴れ)

基本労働時間は8時間だという。

かのアインシュタインは8時間働き、8時間研究し、8時間寝たという。

私もそういう生活を送れば大きな成果に繋がるだろうか。

まぁ例え三日坊主でも自分のためになるだろう。

やってみますか!よいしょー!

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↑「カランボロの財宝」の一部(ヤフーニュース、ナショナルジオグラフィック日本版より転載;オリジナルはPHOTOGRAPH BY KARSTEN MORAN,THE NEW YORK TIMES,REDUX)

【目次】
1.「カランボロの財宝」とは
2.化学分析による産地同定
3.謎の古代国家タルテッソスとアトランティス伝説



1.「カランボロの財宝」とは
カランボロの財宝は1958年、スペインのセビリア近郊で建築作業員によって発見された、2700年前のものとされる金の装飾品群。発見されるやいなや、古代王国タルテッソスの遺物ではないかとする推測と議論が一気に飛び交った。     (ヤフーニュースより引用)
さて、私は「カランボロの財宝」というもの自体を聞いたこともありませんでした。スペインのセビリアって名前は知ってるけどどこだっけ?みたいなレベルです。なので調べてみました。

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↑スペイン、セビーリャの位置と古代王国タルテッソスの範囲(文化圏); Google Mapの画像を一部加工

上図から分かるように、セビーリャはスペインの南部に位置します。この地域で2700年前の黄金の装飾品が出土すると、古代王国タルテッソスのものではないか!?といきなり結びつくのかよく分からないですよね。

タルテッソスは元々「伝説上の古代王国」として知られていました。現地では有名な伝説なようです。何故伝説かというと、世界史にも出てくる紀元前5世紀のヘロドトスの『歴史』、1世紀のストラボンの『地理誌』の記述に見られる程度の情報しかないのです。しかもストラボンの記述は紀元前4世紀のピュテアスの伝聞です。アトランティス並みに情報の少ない古代国家なのです。

現在では実在の古代王国であったことが分かっていますが、このタルテッソス王国の実態にについては本当によく分かっていません。古文書の記述によると紀元前4世紀にはこのセビーリャ周辺域を占めていたようで、また別の記述によると西暦4世紀までには滅んでいたようです。どうやら考古学的な証拠に非常に乏しいようで、ほぼ全ての情報を史書の記述に頼っています。

しかしながらこのタルテッソスは往時非常に有力な交易国家であったようです。その力の源が金・銀・錫(スズ)、銅といった金属・貴金属が豊富に産出した土地であったからのようです。特に錫の価値が高かったようです。

紀元前4世紀のヨーロッパでは鉄器時代への移行したばかりの時期ですから、まだまだ青銅の価値が高かったようです。青銅は銅と錫の合金ですので、錫の交易はタルテッソスに莫大な利益をもたらしたことでしょう。考古学的には紀元前9世紀にはタルテッソス文化が生じていたようですから、この時期であれば青銅器の価値は非常に高かったと言えます。恐らく錫の交易がタルテッソス文化そしてタルテッソス王国の繁栄を支えたのでしょう。

さて、「カランボロの財宝」は複雑な彫刻を施したペンダントや胸飾り、豪華なブレスレットなどからなる21個の金細工だそうです。最初に挙げた写真の他にどのようなものがあるのか気になったので調べてみました。
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↑「カランボロの財宝」の写真(Pinterestより転載)

上記写真以外の「カランボロの財宝」が見つかりませんでした。恐らく...ネックレスのチェーン部分と装飾部分の鈴状パーツを全て個別にカウントするとちょうど21個になるということだと思います。

見事な黄金細工ですが、その時期・その地域の金細工と言えばタルテッソス!となるには歴史記述だけでは根拠として弱いのです。タルテッソスはフェニキア人を主な交易対象として多くの金細工を輸出していたようです。
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↑タルテッソスの金細工の一例(El Correo de Andarciaより転載)

ということで、伝説の古代王国タルテッソスは黄金の王国だったということで、「カランボロの財宝」が結び付くのは分かって頂けたと思います。ではこれまで何が問題だったかというと、「カランボロの財宝」がどこの製品かということです。豊かなタルテッソスが外から輸入したものである可能性もあるわけですね。


2.化学分析による産地同定
さて、考古学の世界で石器や土器の産地同定はよく聞く話ですが、金属の産地同定の事例はなかなかありません。しかも今回は「金」!歴史的にも美術的価値としても貴重なものですから、破壊するわけにはいきません。

今回のケースでは装飾品から僅かに剥がれ落ちた破片を利用して同位体分析が行われたそうです(ちゃんと保管しなさいよ!とか思っちゃいけません)。

分析結果では、「カランボロの財宝」に使われた金は、セビリア近郊のバレンシナ・デ・ラ・コンセプシオンにある4~5000年前の巨大な地下墓地のものと同じ鉱山から採掘された可能性が高いことがわかったとのこと。

このバレンシナ・デ・ラ・コンセプシオンはかつて金の採掘場であり、その後掘削によってできた空間を巨大な地下墓地として利用した可能性を踏まえて、「カランボロの財宝」は時期的にこの地域で約2000年続いた金の加工の終焉を示すものだと解釈されています。

ところで、「カランボロの財宝」はフェニキアの加工技術が使われていたそうです。また発見場所の近くにはフェニキアの寺院が発見されているとのことで、タルテッソスとフェニキアの文化の融合が見られるとのこと。また「カランボロの財宝」のネックレスの装飾にはキプロス様式の図像が見られるとの見方もあるそうです。

貴金属の産出国であり、交易国家として短期間に大きく栄えたタルテッソスは、歴史記録にはほとんど残っていないものの、地中海をまたにかけて広く活発な都市間関係を築いていたようです。近年、タルテッソスに関する考古学調査も実施されたとのことで、今後の新たな考古学的発見や失われた古代タルテッソス王国の歴史復元に期待するところです。


3.謎の古代国家タルテッソスとアトランティス伝説

最後に、あまりにも謎の多いタルテッソスは、一部の人々にアトランティスでは?と考えられているようです。確かにアトランティスはプラトンが『ティマイオス』、『クリティアス』に記述されているのみですし、状況としての類似点はありますね。

今回の分析を行った研究者によれば、「まったくありえない話です。考古学とも科学的な研究とも関係がないのですから」と辛らつなコメントが上がってます。恐らく現地の研究者としてはアトランティス伝説に絡んだオカルト地味た何かしらの「攻撃」を受け続けたのかも知れませんね。

しかしながら海に近い交易都市として大繁栄していて、金銀財宝に恵まれてますし、急に滅んでますし、アトランティスの「モデル」としては候補に上がってもおかしくない気もします。

まぁ私個人はプラトンが独自の「理想国家論」を提示する上で利用した存在だと思っていますが。簡単に言えば、腐敗した現在のアテナイを憂い、しっかりしないとアトランティスみたいになっちゃうよ的な物語ですね。歴史学研究者や哲学史研究者はこのような意見、つまりプラトンが自説を広く普及するための創作とする考え方が多いように思えます。

一方で考古学研究等によれば、サントリーニ島の火山噴火で滅んだミノア王国や、トロイア文明といった具体的な都市を古くからその射程に入れています。アトランティス伝説自体がほぼ創作であっても、プラトンが「モデル」にした都市があったのではないかと考えているわけですね。

仮に類似する都市文明があったとしても、プラトンがそれをモデルにしたのか分かりませんし、この論争(?)は永く残るような気がします。まぁ世界的に見ればアトランティス好きな人はけっこう多いですから、研究者も「戦略的に」その言葉を用いているのかも知れませんΣ( ̄ロ ̄|||)


おまけ:今回登場したスペインのセビーリャは、「新大陸」を発見したコロンブスのお墓があることでも有名です。旅行に行く機会があれば是非訪ねてみてください。とても立派です! 中米や新大陸ネタに繋がっていると何でも喜んでしまうのは性分でしょうか?.。゚+.(・∀・)゚+.゚


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