あるけまや -考古学・歴史ニュース-

「考古学」を中心に考古学・歴史に関するニュースをお届け! 世界には様々な発見や不思議があるものです。ちょっとした身の回りのモノにも歴史があり、「らーめん」すらも考古学できるってことを、他の考古学・歴史ニュースと共にお伝えします!(。・ω・)ノ゙

    お金にならない考古学をお金にしよう╭( ・ㅂ・)و ̑̑ グッ ! 考古学・歴史ニュースの決定版╭( ・ㅂ・)و ̑̑ グッ !

    研究紹介

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    2025ねん 11がつ 1にち(どよーび、はれ)

    がんばるぞ宣言!( ・Д・)

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    arukemaya_y285
    ↑マニフェストのイメージ!?( ・Д・)




    今回は「私の壮大な研究構想をかっこよく書いてみた!( ・Д・)ってお話です(*・ω・)ノ

    *最後にコメントがあるよ!(*^・ェ・)ノ



    🜍 ホモ・ヒストリア宣言

    ――人類史を統合する新しい学問構想――


    Ⅰ. 前口上

    われわれ人類は、自らを歴史する存在である。
    星々が生まれ、生命が進化し、文明が立ち上がる。
    その長大な連鎖のなかで、人間は「過去を語る者」ではなく、「過去を構築し直す者」として現れた。

    いま求められているのは、断片化された学問の再統合である。
    考古学・経済学・生態学・社会学・哲学・歴史学——
    これらを再びひとつの生命体として結び直す枠組み。
    その名を、われわれは ホモ・ヒストリア(Homo Historia) と呼ぶ。




    Ⅱ. 学問の骨格

    ホモ・ヒストリアの第一の使命は、人類史を数理的な骨格として描くことである。
    その基盤となるのは、

    「物質文化マクロ生態学」
    すなわち、人類の財・技術・知識・制度を生態系的構造として数式化する試みである。

    この骨格は、冪関数・指数関数・確率過程といった単純な形をとる。
    しかしその単純さの中に、

    選択・移入・分化・ドリフト
    という四つの進化原理が流れ、人類史の深層に潜む力学的秩序を示す。



    Ⅲ. 学問の肉体

    第二の使命は、数理的骨格に文化的肉付けを施すことである。
    歴史学・文化人類学・芸術学・社会思想などの成果を、
    数式の外皮に血肉としてまとわせ、
    「人間が生きた具体的世界」を呼び戻す。

    ここでは、データと物語、分析と直観、法則と意味が再び交わる。
    学問は冷たい構造ではなく、呼吸する叙事詩として再生する。




    Ⅳ. 統合の精神

    ホモ・ヒストリアは、ビッグヒストリーの理念を継承しつつ、
    宇宙から人類への外的統合ではなく、
    人類の内部における内的統合を目指す。

    それは、自然科学と人文科学の断絶を越え、
    「物質」と「意味」が共に進化する第二の統一学である。




    Ⅴ. 目的と展望

    ホモ・ヒストリアは、

    • 学問の再統合

    • 人類史の再構築

    • 文明の自己理解
      を通じて、未来に向かう新しい知の生態系を育む。

    人類はもはや、歴史の観察者ではない。
    われわれ自身が、歴史を創発する存在なのだ。

    われわれはホモ・ヒストリアである。
    歴史する者。
    そして、歴史を生み出し続ける者である。


    ✳︎附記

    この宣言は、特定の学派に属さず、いかなる学問にも開かれている。
    それは体系ではなく、生成のプロセスである。
    数式と物語のあいだに、新しい「知の生態系」を築くために。






    あるけまや流コメント


    ってことで私の考える考古学研究の統一・統合を人文科学全体に拡張してみたものをマニフェストの形で紹介してみました。

    元々、考古学において「統一的なデータ取得法(発掘調査方法)、報告書フォーマット、分析手法」の確立が重要だなと思っていました。それぞれが個別に自由に研究するのではなく、全人類史(全物質文化史)を統一的に記述・分析する手法があれば、自然科学のように皆で同じ目標に向かって研究成果を積み重ねていけるのになと思っていました。

    その段階でも考古学における数理理論、私のやっている物質文化マクロ生態学を骨組みとして従来の考古学研究や文献史学研究成果によって肉付けすることは考えていました。しかしながら今回の宣言では人文科学全体を巻き込みたいという想いで書いてます。なんだろう、例えるなら、映画という総合芸術があるように、人類史を描くために総合学問があるべきだなとそういう感じ。

    有名になって、研究費余るほどたくさんあって、そうした段階になってからようやく一般の人々も周りの研究者も『壮大な夢』に耳を傾けてくれるのかなと思ってました。だけど人生もうそんなに長くはないからね、宣言してみた!ってお話です。で、私のマニフェスト、どう思った?( ・Д・)










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    2025ねん 10がつ 30にち(もくよーび、はれ)

    なんかよくわからんががんばる!( ・Д・)

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    400117925
    ↑数理的なイメージ!?( ・Д・)




    今回は「文化変化のダイナミクスを解読してみた!( ・Д・)ってお話です(*・ω・)ノ

    *最後にコメントがあるよ!(*^・ェ・)ノ



    Kunst & Mesoudi(2024)「Decoding the Dynamics of Cultural Change」の要約と解釈


    はじめに

    この論文は、異文化接触・文化同化(acculturation)という心理社会学的なテーマを、「文化進化(cultural evolution)」の枠組みから再検討したものです。著者らは、少数者(マイノリティ)と多数者(マジョリティ)という集団間の文化的影響・変化プロセスを、社会的学習・伝達バイアス・群集‐集団効果という進化理論的メカニズムを用いてモデル化可能と考えています。 


    論文が掲載されたのは Personality and Social Psychology Review(2024年)であり、アクセル・メソウディ(Alex Mesoudi)らによる文化進化研究の流れを、心理学・社会学側に接続する意図があります。 



    理論的背景

    文化同化(Acculturation)とその限界

    まず著者らは、従来の文化同化研究(心理学・社会学領域)について、「同化とは少数集団が多数集団の文化を取り入れるプロセス」などの定型モデルが主流であったが、進展が停滞していると指摘します。特に、「マジョリティ集団側の文化変化(多数集団の変化)をほとんど扱ってこなかった」「伝達メカニズムを形式モデルとして明示していない」という限界があります。 


    そこで著者らは、文化進化理論の基本構成(変異・伝達・選択)および社会的学習バイアス(コンフォーミティ、プレステージバイアスなど)を動員して、「どのような条件で多数/少数の文化要素が共有・変容・保持されるか」をモデル化しようとしています。



    文化進化的メカニズムの導入

    具体的には、次のような伝達・選択バイアスを検討しています:

    • コノミティバイアス(conformity bias)=多数派模倣傾向。

    • アンチ-コノミティバイアス(anti-conformity bias)=少数派模倣傾向。

    • プレステージバイアス(prestige bias)=高地位・有名人の文化模倣。

    • ペイオフバイアス(payoff bias)=成功・報酬のある文化特性模倣。

    • 垂直伝達(vertical transmission)=親から子への文化継承。

    これらのメカニズムが「少数集団/多数集団のメンバーがなぜ、どのように文化を取り入れ・維持し・変化させるか」という問いへの説明力を持つと著者らは論じます。さらに、これらが「個体レベルの学習戦略」から「集団レベルの文化的均衡(cultural evolutionary equilibria)」を生み、その均衡が長期的な文化多様性・文化変化に影響を及ぼすという枠組みを提示しています。




    モデル化と分析枠組み

    戦略‐構造‐均衡の三段階

    論文では、モデル化の流れとして次のように整理されています:

    1. 学習戦略の構成:個人や集団が取る文化対応戦略(例:自文化保持+他文化採用、他文化拒否、単独同化など)を定義。

    2. 戦略が集団レベルに展開される構造:複数の個体がそれぞれの戦略を持ち、相互作用・模倣・伝達を通じて文化的特徴が集団に拡散。

    3. 集団文化の長期的均衡(equilibria):戦略と構造の相互作用の結果として、文化特性の分布・多様性・変化速度が安定または変動の状態に落ち着く。

    この三段構成によって、著者らは単なる記述的な文化同化モデルを越えて「数理モデル的枠組み」の提供を目指しています。



    要因・変数の提示

    モデル化にあたって考慮される主な変数・条件には以下があります:

    • 個人属性(年齢、社会的地位、移民経験など)

    • 集団属性(少数/多数の比率、社会的構造、文化的接触頻度)

    • 伝達条件(模倣傾向、学習バイアス、接触ネットワーク)

    • 制度・社会構造(教育制度、言語政策、居住空間構造)

    • 長期的パラメータ(文化的多様性維持、文化的累積変化)

    著者らはこれら変数が相互に作用し、たとえば多数派‐少数派の比率が学習バイアスを変える、模倣確率が文化均衡の安定性に影響する、という仮説を提示しています。




    主な発見・含意

    少数者の影響力と多数者の変化

    一つの重要な含意は、「少数集団メンバーが単に受け入れ側になるだけではない」という点です。著者らは、少数者がプレステージあるモデルになったり、革新文化を提供したりすることで、多数集団に対して影響力を持つ可能性を示しています。これを、「文化進化的均衡」の観点から説明します。

    モデル化の視点から見た接触・同化戦略

    また、異文化接触に関して「単に同化・融合される/されない」の二者択一ではなく、多様な戦略が存在し、それぞれがどのような条件下で選ばれるかを説明可能としています。例えば、「模倣バイアスが強く、接触頻度が高く、少数/多数の比率がある水準を超える場合には、少数者文化の採用が起こりやすい」などの仮説が立てられています。



    長期的文化変化と累積的影響

    モデル化の枠組みを通じて、個別接触/模倣プロセスが累積して「社会全体の文化構造」を変える動きへと繋がるという視点が提示されています。つまり、マクロでの文化拡散・接触効果を説明しうる「進化的ダイナミクス」が描かれています。


    分野横断(心理学/文化進化/社会学)という性格上、数理モデルの提示・図示・仮説検証の枠組み提供に重点が置かれており、考古学的遺物データ/マクロ時空データへの直接適用例は少ないものの、「伝達・接触・変化プロセス」に対する理論的基盤として優れています。






    あるけまや流コメント


    今回も新しい論文を選んでみました。ざっと示すと今回のKunst & Mesoudi(2024)は、文化同化を「学習・模倣・伝達」という文化進化の視点から再考し、少数・多数グループ間の相互作用とその長期的文化構造への影響をモデル化可能と示しました。面白い研究ではあるけれど、論文中にフローチャートがたくさん出てくる一方で実際のデータに沿った話がほとんどないんですよね。

    まぁ心理学・社会学が主な分野横断なのだろうか。文化進化といっても考古学領域ではなく、もっと新しい時期を扱う人類学を想定しているのかも知れませんね。一応「あるけまや」ブログで最近はじめたこの『数理考古学研究紹介』ですけれど、今回の事例のように「考古学」とは限らないんですよね。より広く、「文化」に関わる数理研究の紹介だと思って頂けたらなと思います。

    でもこうして広く「人文科学」の範疇に数理手法を持ち込んだ研究がたくさんあって嬉しいです。私の論文で研究史として取り上げるかどうかはさておき、世界は広いな~と思いますヾ(´ω`=´ω`)ノ












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    2025ねん 10がつ 29にち(すいよーび、はれ)

    めちゃ鼻水出る!( ・Д・)

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    GPU
    ↑数理的なイメージ!?( ・Д・)




    今回は「文化進化を生物進化として捉えてみた!( ・Д・)ってお話です(*・ω・)ノ

    *最後にコメントがあるよ!(*^・ェ・)ノ



    『Statistical modelling in archaeology: some recent trends and future perspective』(Enrico R. Crema 2025年)の要約と解釈

    📄 概要

    Crema の論文は、考古学における統計モデリング(statistical modelling)がここ十数年でどのように進化してきたかをレビューし、特に以下の三つの技法に焦点を当てています:

    1. 多層モデル(multilevel models)

    2. 欠測データ・測定誤差への統計的対応(missing data & measurement error)

    3. シミュレーション‐ベースの推論(generative inference)

      論文はこれらの技法が、(a) 考古記録の入れ子・階層構造(nested/hierarchical data)を扱う、(b) データ不確実性を積極的に組込み、(c) 形式理論と観察データとの推論的リンクを構築する、という点で有効であると論じています。

      ただし、現時点で「これらの技法が考古学の定型分析ツールとして定着している」とは言えず、むしろ普及途上であると指摘しています。



    🧮 各技法とその意義

    1. 多層モデル(Multilevel Models)

    • 考古学データでは、遺跡‐層‐測定という入れ子構造、あるいは地域‐遺跡‐個体という階層構造が頻繁に現れます。Crema は、従来の単純回帰モデルではこれらの構造を無視しがちであり、多層モデルを使うことで「群間変異(between-group variation)」および「群内変異(within-group variation)」を同時に捉えられると述べます。

    • たとえば、ある墓葬の副葬品量が「富裕度」という指標を通じて食料資源・人口規模・時期・地域という階層変数の影響を受ける場合、遺跡ごと・時代ごとに異なる傾き (slope) や切片 (intercept) を許す多層モデルを設定できます。これにより「一般的な関係性」と「遺跡特有の異質性」の両方を把握できます。

    • Crema はこの手法が「サンプルの偏り(sampling imbalance)」や「グループ構造の無視」によるバイアスを軽減する点で特に優れているとし、考古学においてクロスサイト・広域比較を行う際にはむしろ「標準ツール化すべき」だと提言しています。


    2. 欠測データおよび測定誤差への対応

    • 考古学的観察データは、「欠落(たとえば破片の欠如)」「測定誤差(年代測定誤差、層位不確定性など)」が常につきまといます。Crema は、これらを無視することこそが誤った推論を招くと指摘します。

    • 特に「測定誤差を内部モデルに組み込む(error-in-variable models, Bayesian EIV など)」モデル化が進展していることを紹介しています。例えば年代モデル(14Cデータ)において、測定誤差を明示的にモデル化することで「観察値だけをそのまま用いる」よりも推定精度が改善されると述べられています。

    • また欠測データへの対応として、データ補完(imputation)やモデルによる再重み付け(weighting)を用いながら、「不確実性」を可視化・モデル化する必要性が論じられています。


    3. シミュレーションベースの推論(Generative Inference/Simulation-Based Inference)

    • Crema は、観察データを記述・相関づけるだけではなく、モデルを使って「もしこうだったらどうなるか(What-If)」をシミュレーションし、観察データとの比較を通じて理論を検証するアプローチが増えていると述べています。

    • 具体例として、文化的変化・技術伝播・人口拡散などをモデル化し、シミュレーション結果を観察データと比較することで、モデルの仮定(初期条件、伝播率、交流率など)を検証する試みが紹介されています。

    • ただし、Crema はこの技法の限界も慎重に論じています:例えば「多数のシミュレーション実行が必要」「初期条件やモデル構成の主観性」「観察データの生成過程をモデル化できない場合の限界」など。



    🔍 本論文が提示する課題と将来展望

    • 考古学で統計モデル・数理技法を適用する際の教育・方法論的なギャップを指摘しています。たとえば、多くの考古学プログラムでは統計・モデリング教育が選択的であり、定型化されていないという課題。

    • また、データ共有・オープンサイエンス化(コード公開・データ公開)が進むことで、より複雑な手法を導入しやすい環境が整いつつある点を強調しています。

    • 将来方向として、Crema は「多階層・複合構造モデル」「不確実性の形式化」「モデルと観察を結ぶシミュレーション手法」の三つをキーフォーカスに挙げています。これらは、考古学・数理考古学の次世代潮流を形作るものです。

    • その一方で、モデルが誤用されたり、データの前提を無視したまま高級手法だけが導入される危険性も併せて警告しています。統計手法の導入は、単純な「装置化」ではなく、データ・仮定・モデル構造を慎重に検討する必要があります。



     

    ✏️ まとめ

    Crema によるこのレビュー論文は、考古学・数理考古学における手法的革新の最前線を整理したものです。特に、

    • 多層モデルで階層構造を捉えること、

    • 欠測・測定誤差を明示的に扱うこと、

    • 観察データを超えて理論/モデルから生成されるデータを扱うこと
      の三つが、現在進行形の潮流として浮上しています。





    あるけまや流コメント


    今回は最新研究の紹介になっていて、私も参考にすべき内容が盛り沢山なのですが、まぁ内容が難しい。内容というか実践する場合の難しさかな。

    例えば多層モデル。元々マヤ研究としてマヤ地域内の遺跡サイズを降順に並べると冪乗則に従うというものがある。これは都市の順位・規模法則を参考にした研究なんだよね。で、冪関数はスケール不変性があるので社会サイズの違いを無視して構造性が保たれると私は思っていて、じゃあ冪関数使ってもっとミクロに1遺跡内の建造物サイズを対象にしようぜって思ったわけです。

    そこで更に経済学におけるローレンツカーブとジニ係数を用いた研究がなされて、そこでは建造物サイズが経済指標となると仮定して分析が行われたんだ。私の物質文化マクロ生態学は順位・規模法則とローレンツカーブの研究を応用して、1遺跡内の各建造物グループに対する単位体積当たりの遺物の種別と多寡をデータにして、『財の社会不均衡分布の変遷』として物質文化史を描くというものなんだよね。


    だから多層モデルは理論として内包しているんだけれど、発掘データの取得に時間を要するのでまだまだそういう段階にないな~と思う。古い旧調査の報告書を使う必要性もあるのだけれど、そこではクレーマが言うようなデータの欠損や不確実性の問題もあるし、重み付けもやってかにゃならんし、その辺の実装が大変だな~と思います。

    クレーマが言ってることはとても有用だと思うのでまた繰り返し読んでみるかな、もう少し真剣に!( ・Д・) ってかやぱ日本と違って、海外はこういう議論も活発で数理考古学が進んでるよね! どう? 2025年だから最新の数理考古学の抱える諸問題が少し明らかになったかな~って思います(*^・ェ・)ノ












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    2025ねん 10がつ 28にち(かよーび、はれ)

    さて、生まれ変わったかのように頑張るか!(・∀・)つ

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    pict-physics
    ↑数理的なイメージ!?( ・Д・)




    今回は「文化進化を生物進化として捉えてみた!( ・Д・)ってお話です(*・ω・)ノ

    *最後にコメントがあるよ!(*^・ェ・)ノ



    文化と進化のプロセス:ボイド&リチャーソンによる文化進化理論の確立


    📰はじめに

    1985年、ロバート・ボイド(Robert Boyd)とピーター・J・リチャーソン(Peter J. Richerson)は、シカゴ大学出版局から『Culture and the Evolutionary Process』を刊行した。この書は、文化を「遺伝的進化とは異なるが、それと同等に進化的メカニズムで説明できる体系」として数理的に捉えた初の総合的理論書であり、今日の文化進化論・文化遺伝学・数理社会科学の出発点とされる。


    1. 書籍の背景

    1970年代の生物学では、進化を遺伝子レベルで説明する「総合説(the Modern Synthesis)」が支配的だった。これに対し、ボイドとリチャーソンは「文化もまた進化的プロセスを持つ」という立場から、文化的特徴(行動・技術・信念・規範)がどのように伝わり、変異し、淘汰されるかを分析する新しい枠組みを提示した。彼らのアプローチはダーウィン主義を文化に応用した単純な比喩ではなく、個体間の模倣・学習・社会的伝達を明示的な確率過程として数理的に定式化することに特徴がある。



    2. 理論の枠組み

    (1) 文化伝達の3モード

    ボイドとリチャーソンは、人間社会における文化情報の伝達を3つのモードに整理する。

    1. 垂直伝達(Vertical Transmission):親から子への文化的継承(例:言語・信仰・価値観)。

    2. 水平伝達(Horizontal Transmission):同世代間の模倣や流行による拡散。

    3. 斜交伝達(Oblique Transmission):年長世代全体から若年層への学習(教育・制度など)。

    これらの伝達経路は、進化的プロセスにおける遺伝子伝達とは異なる動態を生み出す。たとえば、水平伝達が強い社会では流行的変化が加速し、垂直伝達が支配的な社会では文化が安定化する。




    (2) 変異と淘汰のプロセス

    文化は模倣の誤差・創造的改変・社会的学習バイアスなどを通じて変異を生じる。

    代表的な「文化的選択バイアス(cultural selection biases)」として、彼らは以下を挙げた:

    • 内容バイアス(content bias):内容が魅力的・理解しやすいものが残る。

    • 頻度依存バイアス(frequency-dependent bias):多くの人が採用している行動が模倣されやすい。

    • 権威バイアス(prestige bias):成功者・高地位者の行動が模倣される。

    こうしたメカニズムを通じて、文化的特徴は自然選択とは異なる「社会的淘汰圧」によって進化する。




    (3) 数理モデルによる表現

    ボイドとリチャーソンの最大の革新は、これらのプロセスを確率過程・差分方程式・マルコフ連鎖として表現した点にある。文化変化を「個体群における文化的型(trait)の頻度変化」として定式化し、遺伝的進化モデル(Fisher、Wright、Maynard Smith)と同様の数学的枠組みを文化に適用した。


    これにより、文化の安定状態・多様性維持・進化速度などが解析可能となった。彼らのモデルは、その後の進化文化学・社会学的モデリング・模倣ダイナミクス研究(Cavalli-Sforza & Feldman, 1981 など)と共に、文化進化を定量的に扱う基礎を築いた。




    3. 主な知見と含意

    ボイドとリチャーソンは、文化を「生物進化の単なる副産物」ではなく、「独立した進化システム(an autonomous evolutionary system)」として扱うべきだと結論づけた。


    彼らによれば、文化は以下の特性を持つ:

    • 遺伝的進化よりも変化速度が速い(数世代以内に変化が拡散)。

    • 模倣の誤差選択的学習によって新奇性が生まれる。

    • 環境変化への適応を迅速に行う柔軟性がある。

    • 社会構造・制度・規範を通じて集団単位の淘汰が発生しうる。

    このようにして、文化は遺伝的進化とは異なるメカニズムで人類史を方向づける動因として位置づけられた。




    4. 学問的影響

    『Culture and the Evolutionary Process』は、以下の諸分野に持続的な影響を与えた。

    • 文化進化論・進化文化学:Henrich, Mesoudi, Boyd (続著)らが理論を発展。

    • 考古学・文化人類学:文化的変異・拡散を進化的モデルで説明する試み。

    • 経済学・社会シミュレーション:模倣・規範ダイナミクス・社会学的学習モデルの理論基盤。

    • 心理学・行動科学:社会的学習理論と結合し、ヒト特有の文化進化能力を説明。

    この書は「社会における文化伝達の方程式」を提示した初めての体系的試論として、現代の文化進化研究の出発点である。





    あるけまや流コメント


    今回紹介したのは書籍なんですよね。で、重要な論文ではあるんですが、長くて全部読めてない( -д-)ノ 使ってる数式も難しいしね。そしてやっぱり数理考古学は考古学者がやらんとダメだと思う。応用数学や物理学出身の研究者はすでにある理論をそのまま使おうとするから、大体の研究って「拡散」の話になると思うんだよね。だから彼らの研究って大体石器や土器の拡散ばかりじゃない?そんな気がする。気のせいかな?

    でも本当にこの研究は面白いと思う。私の物質文化マクロ生態学はその名の通り、一社会の物質文化の在り方とその変化を「マクロ」な視点で捉えるものだけれど、この研究は個体間の情報伝達を扱っているので「ミクロ」な視点だと思う。つまり両者は補完的な関係にあるのかなと思う。

    しかしながらどう接続していいかまったく分からない。物理学でもミクロな世界を扱う量子力学では確率的な話になるよね。そしてこの研究でもミクロを扱って確率的な話になっている。物質文化マクロ生態学でもドリフトの属性は確率なのだけれど、もっと大雑把だから(笑) 物理学におけるマクロとミクロの研究と物質文化におけるマクロとミクロの研究の対比は面白いと思う。だけれど物理学において相対性理論と量子力学を繋げる統一理論の構築が困難であったように、物質文化におけるマクロ・ミクロの統一は困難になるんだろうなと思います。


    ま、今はその段階じゃないからいいか!( ・Д・)









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    2025ねん 10がつ 25にち(どよーび、雨)

    月末は毎度地獄だぜ!( -д-)ノ

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    ↑数理的なイメージ!?( ・Д・)




    今回は「文明をシステムとして捉えてみた!( ・Д・)ってお話です(*・ω・)ノ

    *最後にコメントがあるよ!(*^・ェ・)ノ




    「Archaeological Systems Theory and Early Mesoamerica」(Flannery 1968)

    はじめに

    Kent V. Flannery は『Anthropological Archaeology in the Americas』所収の章「Archaeological Systems Theory and Early Mesoamerica」を通じて、考古学にシステム理論(systems theory)を導入する可能性を探りました。本論文は、メソアメリカ地域、特にオアハカ高原・谷部や周辺の定住化・農耕化・社会複雑化のプロセスを具体的な事例にしながら、文化変化を「入力(inputs)→変換(throughputs)→出力(outputs)」という枠組みで整理する試みです。数式による厳密な定量分析は行われていないものの、文化を生態系モデル的に捉える発想として、考古学理論史において重要な位置を占めています。




    論文の構造と主な論点

    1. システム理論の適用可能性

    まずフラナリーは、考古学的対象(集落、技術、制度、交換ネットワークなど)を一つの「システム」と見なす観点を紹介します。ここでの「システム」とは、複数の要素(例えば水利、作物、人口、技術、環境)が相互作用し、自己調整・変化を伴いながら動くまとまりを指します。彼はこの観点から、文化変化を単なる時系列的変化ではなく、変数間のフィードバック(正/負)やエネルギー・物質・情報の流れ(流入・流出)として捉えようとします。


    具体的には、次のような枠組みが提示されます:

    • 入力 (Inputs):環境条件(気候、土壌、植生)、資源(野生植物、動物)、人口圧力、技術知識、隣接社会との接触など。

    • 変換 (Throughputs):作物栽培、灌漑・水管理、居住パターンの変更、社会分業、交換・交易、儀礼・制度化など。

    • 出力 (Outputs):余剰生産、貯蔵・蓄積、定住化、階層制度、都市化、交換圏の拡大、社会的複雑化など。

    これらはあたかも生態系モデルにおけるエネルギー流通や生物群集構造のように捉えられており、文化システムを生態‐社会‐技術の統合的視点から分析しようという意図が明確にあります。



    2. メソアメリカ例の検討

    次にフラナリーは、メソアメリカ(特にオアハカ高原、谷部の農耕化・定住化‐初期村落期)に関する考古資料を参照しながら、上述の枠組みを適用しようとします。彼は、次のような関係性を提示します:

    • 野生植物利用から農耕作物(トウモロコシ、豆、かぼちゃなど)への移行。これは「入力」の変化(植物知識、気候変動、人口圧)に起因する。

    • 継続的な作物栽培・収穫・貯蔵・家屋建設という「変換」プロセス。すなわち、定住化・水利・技術知識伝播が伴う。

    • その結果として、定住村落・階層化・集団間交換・地域集約が出力される。これが社会制度の変化、拡大する交換ネットワーク、拡張する集落配置へと繋がる。

    フラナリーは、特に「正のフィードバック(positive feedback)/負のフィードバック(negative feedback)」という概念を使い、農耕→定住→社会複雑化へと進む過程における自己強化メカニズムを示唆します。たとえば、余剰収穫が技術蓄積を生み、それがさらに作物制度を拡大し、人口増・集落拡大を促す――という正フィードバックの回路が、初期文明への道を開いたというモデルです。

    また、彼は「システムは開放系である(open system)」「モジュール的な連関を持つ(modular interlinked subsystems)」という点を強調し、研究者は文化システムを外界(環境・他社会)との相互作用の中で理解しなければならないと主張します。



    3. 社会的複雑化・階層制度の出現

    フラナリーは、農耕・定住という技術・制度的変化が、どのようにして社会的階層・複雑化を誘発したかについても論じています。彼は次のメカニズムを提示します:

    • 農耕定住による食料余剰 → 所得・蓄財可能性 → 指導的役割・儀礼的統合の必要性 → 集権的リーダーシップ・階層制度へ。

    • 定住村落配置と集団間交換・交易の増大 → 他地域との接触・技術交流・文化伝播 → 社会ネットワーク拡大。

    • 社会分業・専門化・貯蔵・余剰管理といった制度的変換(throughputs)が、集落規模・地域規模の変換(outputs)をもたらす。

    このように、フラナリーは文化変化を技術・制度・人口・環境という複合変数の相互作用として提示し、初期文明の出現をシステマティックに描こうとします。



    4. 手続き・限界・方法論的注意

    フラナリーは論文内で、自らのモデルの位置づけと限界を明確にしています。主な注意点として以下があります:

    • 本モデルはあくまで 説明モデル(explanatory model) であり、数式による厳密な定量化を目的としたものではない。データが不十分な面を認めています。

    • 多数の変数(環境・植生・人口・技術・制度)が絡むため、単一の因果関係を簡単に特定することはできない。

    • 社会的・文化的意味(人々の意図・象徴・価値)は、モデル化において容易に軽視される可能性がある。そのため文化理論的な解釈を補う必要ありと述べています。

    • 初期メソアメリカ資料の保全状況・年代確定が限定的だったため、モデルの仮説性・比較性には慎重さを要求しています。

    このように、システム理論の導入可能性を提示しながらも、その方法論的前提・データ制約・文化論的意義への配慮がなされており、1960年代末の考古学理論における思想的転換点として位置づけられます。




    主な貢献と核心的洞察

    • フラナリーのモデルは、文化システムを「流入‐変換‐出力」のダイナミックな流れとして捉える枠組みを、考古学的対象に提供しました。

    • 農耕・定住・階層化という重要な変化を、単なる時代系列ではなく、システム構造の変化・フィードバック機構・モジュール化といった観点から捉え直しました。

    • 文化変化の原因を「技術/制度/人口/環境」という複数要因の統合的相互作用として整理し、考古学における説明志向(explanatory archaeology)を促しました。

    • また、文化を開放系として捉えることで、環境変動・他集団との接触・資源流通といった変数を視野に入れ、従来の文化史的記述法に対する批判的代替枠組みを提示しました。



    ↑前回のフラナリーに関する記事



    あるけまや流コメント


    1968 年の Flannery 論文「Archaeological Systems Theory and Early Mesoamerica」は、考古学における理論的転換を象徴する仕事です。文化変化の「構造としての捉え方」を刷新し、流入・変換・出力という生態‐システム的枠組みを提示しました。技術・人口・環境・制度という複合変数を絡ませて文明の出現と変化を説明しようとしたこのモデルは、後のプロセス考古学、文化進化論、数理考古学へと至る流れを形成する基盤となりました。


    ということで、前回挙げたフラナリーが提示した理論面は、私の物質文化マクロ生態学とそっくりなんですよね。まぁかなり表面的な部分とも言えるけれど、物質文化を『生態系プロセスとの類似性』、『開放系』と捉えるところなんかそっくりです。


    でも大きく違うのは彼のモデルは自然言語記述モデルであり、私のモデルは数理モデルってことでしょうね。フラナリーは理論構築としてはかっこいいことたくさん言ってるんだけれど、実践としてはやはりあくまで文系学問の範疇から抜け出せていないなと思います。

    自然科学手法を積極的に取り入れて法則定立的研究を行う、せっかくのプロセス考古学なのだから、数理研究を取り入れて欲しかったなと思います。まぁでもおかげで私の今の研究があるのか。そう考えると、私は現代のプロセス考古学者としてフラナリーの理論面の多くを引き継ぎつつ数理研究を実践し始めた後継者的な立場なのかな。もちろん相手は偉大なフラナリーなのだから、恐れ多くてここだけの話だけどね( -д-)ノ











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    2025ねん 10がつ 24にち(きんよーび、くもり)

    申請書書かにゃだし、Youtubeも溜まってるけど、数理モデル用のPythonコードも改良したい( -д-)ノ

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    proof


    ↑数理的なイメージ!?( ・Д・)




    今回は「文明を進化を表現してみた!( ・Д・)ってお話です(*・ω・)ノ

    *最後にコメントがあるよ!(*^・ェ・)ノ


    📰はじめに

    1972年に『Annual Review of Ecology and Systematics』誌に発表されたKent V. Flanneryの論文「The Cultural Evolution of Civilizations」は、文化進化論を考古学的・生態学的文脈で整理した初期の代表的論考として知られています。この論文は、単なる文明史の記述を超え、文化を生物学的進化のアナロジーの中で理解しようとする先駆的な試みでした。Flanneryはここで、文化変化を生態系的プロセスとして把握し、社会構造や技術、経済体系が環境との動的な関係の中で形成・変化していくメカニズムを理論的に論じています。



    🌱 文化進化を「システム」として見る視点

    Flanneryの最大の貢献は、文化を静的な「様式(style)」や「段階(stage)」ではなく、複数のサブシステムが相互作用する適応システム(adaptive system)として捉えた点にあります。彼は、エネルギー利用・人口密度・技術革新・社会的分業などの要素を、生態系モデルのように連関づけ、文化の変化を「環境条件への適応過程」として描き出しました。


    この考え方は、後の文化生態学(cultural ecology)システム考古学(systems archaeology)の発展に直結し、考古学的データを生態的変数として扱う枠組みを提示するものです。Flanneryは、文化進化を「累積的でありながら非線形なシステム的過程」として描き、単純な「直線的進歩史観」からの脱却を図りました。




    🔁 適応・選択・変異という「進化の言語」

    Flanneryは生物進化の理論をそのまま文化に適用することは慎重に避けていますが、「選択(selection)」「変異(variation)」「適応(adaptation)」という進化的語彙を理論的装置として再解釈しました。たとえば、技術革新は遺伝的突然変異に類似し、社会的・経済的要請によって「選択」され、制度化されることで文化体系に固定化されると述べています。


    このようなモデルは後の進化考古学(evolutionary archaeology)文化進化論(cultural evolution theory)の基礎的枠組みとなり、後続のBoyd & Richerson(1985)やShennan(2008)らの理論的構築に影響を与えました。Flanneryの視点では、文化の変化はランダムな変動ではなく、エネルギー効率・人口圧・社会的安定性などの複数要因のバランスによって駆動される「自己調整システム」なのです。




    🧩 文明の発展段階を再構築する

    論文では、狩猟採集社会から農耕社会、さらに国家的文明への移行を、「環境収容力(carrying capacity)」と「社会的複雑性(social complexity)」の関係としてモデル化しようとしています。Flanneryは、各段階の文化体系が次のように構造転換を経ると考えました。

    1. 小規模なバンド社会:柔軟で可塑的な適応、低い社会分化。

    2. 首長制(chiefdom)社会:人口密度の上昇と再分配の制度化。

    3. 国家形成段階:余剰の蓄積、階層化、中央集権的な意思決定の発達。

    この発展過程を彼は「単なる文化史的記述ではなく、動的平衡モデルとして定量的に説明できる」と強調しました。すなわち、社会的制度は静的な「段階」ではなく、環境条件とエネルギー流によって安定したり崩壊したりする開放系なのです。




    📈 考古学データへの数理的接近

    Flanneryは具体的な事例分析よりも理論的枠組みの提示に重点を置いていますが、同時に数理的アプローチの可能性も示唆しました。


    彼は、遺跡の分布や資源利用パターンを「変数間の関数関係」として扱うべきだと主張し、単なる記述的分類を超えた定量的モデリングの方向性を指し示しています。これはのちに考古学における最適採取理論(optimal foraging theory)種-面積関係(SAR)など、数理生態学的アプローチが導入される下地ともなりました。




    🌍 現代への影響と再評価

    Flanneryの1972年論文は、今日の文化進化論や数理考古学にとって「前史」ともいえる重要な位置を占めています。彼が提示した「文化は複数の適応的サブシステムからなる自己組織的システム」という考え方は、現在の複雑系モデルエージェントベース・シミュレーションにも通じるものです。


    まとめとして、Kent V. Flannery の「The Cultural Evolution of Civilizations」は、文化変化を進化論的・システム論的に理解するという、20世紀後半の考古学理論における転換点を象徴する論文でした。それは単に「文明は進歩する」という物語ではなく、文明は環境・技術・社会構造の非線形な相互作用の中で生まれ、変化し、崩壊するという動的な世界観の提示でした。Flannery の理論は、後の文化進化論・生態考古学・数理考古学の橋渡しとして、現在でも再評価され続けています。





    あるけまや流コメント


    私の「物質文化マクロ生態学」は社会進化論・文化進化論の影響もありますが、最も重要な由来としては社会有機体説の流れの中で、オートポイエーシス・システム理論とルーマンの社会システム論の影響を強く受けています。

    まぁ私はマルクスの物質代謝の概念も取り入れているのでオートポイエーシス・システム理論やルーマンの社会システム論とは異なり、「物質文化系=開放系」と考えているんですけどね。



    さて、こうやって要約してみるとフラナリーの考え方は私にそっくりだなと思います(私が彼にそっくりなのか)。プロセス考古学者同士だから似るのも当然かも知れませんね。違いがあるとすると、私の場合は、従来の考古学で捉えられてきた現象面の記述を最優先し、なるべく単純化した数式で記述していることですかね。『これまでの考古学データの表現方式を変えた(だけ)』とも言えます。だから実践的だと思うんですよね~(。・ω・)ノ゙


    今回の論文ではフラナリーの理論面は分かりましたが、実践面が分からないんですよね。幸い彼はメソアメリカ研究もしてますので、具体例を扱った論文を次回探してみようと思います!


    ・・・少しずつ『物質文化マクロ生態学』がどんなものか分かってきた?( ・Д・)













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    2025ねん 10がつ 23にち(もくよーび、くもり)

    今月の中で来週4日間のみ研究できる!ヽ(TдT)ノ

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    20160527164100

    ↑数理的なイメージ!?( ・Д・)




    今回は「血縁関係を数的に表現してみた!( ・Д・)ってお話です(*・ω・)ノ

    *最後にコメントがあるよ!(*^・ェ・)ノ




    Analysis of Kinship Relations with Pajek」(Batagelj & Mrvar 2008)



    📰はじめに

    社会を「つながり」の集合として見たとき、親族関係とはもっとも基本的で、かつ最も複雑なネットワークのひとつです。 Vladimir Batagelj と Andrej Mrvar の論文「Analysis of Kinship Relations with Pajek」は、この〈人と人との結びつき〉を、数理的に描き出す試みです。使用されるツールは、ネットワーク解析ソフト Pajek(パイエク)。もともと社会関係分析や情報ネットワーク研究で知られるこのツールを、親族関係の可視化と構造的理解に応用したのが本研究の特徴です。



    🕸️ 親族を「ネットワーク」として見る

    Batagelj & Mrvar の出発点は、親族を血縁や婚姻による連鎖関係としてではなく、ノード(個人)とエッジ(関係)の集合体として扱うという視点です。ノードは個々の人物、エッジは「親」「子」「兄弟」「婚姻」などの関係を表します。これらをグラフ理論の形式で整理することで、親族構造の複雑さを定量的に分析できるのです。


    Pajekでは、数百から数千単位のノードを扱うことが可能であり、例えば一つの部族や村落全体の婚姻ネットワークを構築することもできます。ここで重要なのは、可視化と構造分析の両立です。単に家系図を描くのではなく、どの人物がネットワークの中心に位置し、どの関係が集団の分節を生むのかを数理的に抽出します。





    📊 構造分析の手法:中心性・クラスター・パス

    論文では、ネットワーク科学で一般的に用いられる指標を親族関係に適用しています。

    • 次数中心性(Degree centrality):多くの親族関係をもつ個人を特定し、社会的ハブを抽出。

    • 媒介中心性(Betweenness centrality):異なる親族集団をつなぐ「橋渡し役」を発見。

    • クラスター分析:婚姻や血縁のつながりによって形成されるサブグループを明確化。

    • パス解析:親族を介した関係の「距離」や「世代間の連鎖」を数量化。

    こうした分析により、従来の家系図が示しにくかった「社会的構造としての親族ネットワーク」が浮かび上がります。たとえば、ある個人が直接血縁をもたない複数の集団を仲介している場合、それが社会的統合や交換関係のキーになることがわかるのです。




    🧭 Pajekの機能と親族データへの適用

    Pajekは、複雑なネットワークを効率的に扱うための可視化・統計ツールです。論文では、親族関係を入力する際の具体的なデータ構造が示されています。各ノードにはID(個人名や番号)が与えられ、エッジには関係タイプ(親子・婚姻など)がラベルとして付与されます。


    解析のプロセスは次のような流れです:

    1. データ整形(親族関係のテキスト情報をネットワーク形式に変換)

    2. ネットワーク生成(Pajek形式でノードとエッジを入力)

    3. 可視化と色分け(性別・家系・婚姻グループなどで表示を区分)

    4. 統計的分析(中心性・分布・サブグループ検出)

    著者たちは、特に大規模親族データに対して、Pajekのスケーラビリティが有効であることを強調しています。Excelや通常の家系図ソフトでは困難な規模の関係群を一望し、その上で数理的指標を算出できる点が、本手法の強みです。




    🧩 文化・社会人類学への示唆

    Batagelj & Mrvar の論文は単なる技術報告にとどまりません。彼らは、親族を「文化的ネットワーク」として捉える枠組みを提示し、社会構造・婚姻戦略・居住パターンの理解へと応用する可能性を示しています。特に注目されるのは、「関係のパターンが文化的規範を反映する」という洞察です。

    例えば、父系社会では男性ノード間のリンク密度が高く、母系社会では婚姻リンクが複雑化する、といった構造的差異が、数理的に可視化されるのです。こうした分析は、単に人類学的モデルの検証だけでなく、歴史社会の再構成にも貢献しうると考えられます。




    🪶 考古学・物質文化研究への応用

    この研究は、物質文化の分布や交換ネットワークを分析する上でも強い示唆を与えます。考古学における遺物や財は、人々の社会関係の痕跡を反映しており、それらをノードとリンクで構成すれば、「財のネットワーク」として親族関係ネットワークと類比的に扱うことができます。




    🔍 まとめ:関係の科学としての親族研究

    Batagelj & Mrvar (2008) の「Analysis of Kinship Relations with Pajek」は、親族という古典的テーマを最新のネットワーク科学の枠組みで再解釈した研究です。彼らのアプローチは、単なる可視化ではなく、「関係の構造そのものをデータ化」する方向を切り拓きました。


    考古学や文化進化論の分野でも、こうしたネットワーク的思考はますます重要になっています。社会的結びつきの構造が、財や技術の分布、さらには文化の進化を形づくる――その数理的理解への第一歩として、この論文は今もなお示唆に富む成果といえるでしょう。






    あるけまや流コメント


    Batagelj & Mrvar の方法は、「物質文化のマクロ生態学」において、財の流通・技術の伝播・交換圏の構造を分析するための数学的基盤になりうるとは思います。



    そういう意味で面白い論文だなとは思います。ただ実際にはティカルにおける様々な財の分布式をつくり、更にはそれらの時系列データを取得し、碑文学研究成果を考慮した歴史解釈を属性とした進化式を作って財の分布式の変化の理由を紐解く、ここまでがワンセット。

    更には遺跡間で比較する必要があり、ティカルを中心とした遺跡の大小サイズそれぞれで比較し、遠方に所在する比較的ティカルと関係性の薄い遺跡の大小サイズそれぞれで比較し、カラクムルを中心とした敵国の遺跡の大小サイズそれぞれで比較する、ここまで別セット。

    最初のセットか次のセット時に財の基本分布とその変化から財の種別を分類し、財の社会不均衡分布に関する法則性を見出すが第3段階。

    その法則性に関してより詳細に分析する上で財と財の諸関係を明らかにする上で今回のネットワーク分析が有用、、、って感じですかね。



    なので研究計画としてはかなり先の話、ないし、私の人生終わっちゃいそうなので誰かに任せるかも知れないけれど、面白い論文だな~って思います。

    さて、どんどん数理考古学関連の研究史をまとめていくぜ(*^・ェ・)ノ











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    2025ねん 10がつ 22にち(すいよーび、雨)

    最近首も痛い!( ・Д・)

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    ↑数理的なイメージ!?( ・Д・)




    今回は「血縁関係を数的に表現してみた!( ・Д・)ってお話です(*・ω・)ノ

    *最後にコメントがあるよ!(*^・ェ・)ノ



    Woodrow W. Denham(2012)“Kinship, Marriage and Age in Aboriginal Australia” — 要約と考察

    1. 概要と背景

    Woodrow (W. W.) Denham は、長年にわたりオーストラリア先住民(とくに Central Australia の Alyawarra / Alyawarr)に関する親族・婚姻・年齢制度のフィールド資料を蓄積し、それらを形式的・数理的観点から再分析してきた研究者です。


    2012 年に Mathematical Anthropology and Cultural Theory(以下 MACT)誌に発表した “Kinship, Marriage and Age in Aboriginal Australia”(Vol.4 No.1)は、Alyawarra を中心とした複数の中央豪州社会に関する豊富な一次データを土台に、親族語、婚姻ネットワーク、年齢構造の複雑な相互作用を論理的かつ形式的に記述しようとする野心的な試みです。本文は膨大なデータ表・系図・図(親族関係図、婚姻網図)を含み、文化的実践の構造性(structure)と動態(dynamics)を数理的に把握するための素材と分析視角を提供します。

    この論文は単なる記述論文ではなく、「文化制度を形式的(modelable)に扱う」 という立場に立ち、親族・婚姻・年齢がどのようにして(a)社会の持続性を支え、(b)集団間の接触・拡散を媒介し、(c)出生・養育・再生産のパターンを決定するかを論じます。Denham はまた、古典的な kinship theory(例えば Lévi-Strauss, Fortes らの構造主義的/機能主義的記述)や、その後の数学的人類学の議論(数理表現の可能性)とも対話的に論を進めます。




    2. 研究目的と主要な問い

    Denham の本論文は、次の主要問いを軸に構成されています。

    1. Alyawarra 社会における親族呼称・婚姻規則・年齢構造は、どのような機構(ルール)で結びついているのか?

    2. これらの制度的ルールは、個々の婚姻選択・子育て(alloparenting)・居住(residential composition)にどのように影響するのか?

    3. これらの関係性は数学的(形式的)な記述に耐えうるか、またどのようなモデル化が可能か?

    これらの問いに答えるため、Denham はフィールドデータの量的処理(親族呼称の符号化、婚姻事例の集計、年代・年齢データの整理)と、図解的/論理的な構成(世代構造のヘリカル表現、社会間リンクのスキーマ)を併用しています。






    3. データと方法

    データ:1960〜70年代にかけてのフィールド・ノートや系譜情報を基に、Alyawarra の結婚事例・親族呼称表・年齢階層を整理。Denham は膨大な個票(個人レベルの婚姻・出生・居住記録)をコーディングしており、学術誌本文だけでも多数の図表を添付しています(補助資料やデータセットはアーカイブ/データベースにも登録されている)。



    手法(アプローチ)

    • 親族呼称(kin terms)を“機能的カテゴリ”として符号化し、誰が誰に対してどの用語を用いるかを関係式として整理。

    • 婚姻の“接点”を社会間ネットワークとして可視化(言語集団・居住場所・年齢差などを軸にした婚姻リンク図)。

    • 年代・世代構成を“螺旋(helical)”的に図式化し、世代交代と婚姻規則(exogamy / endogamy)がどのように連鎖するかを示す。

    • これらを踏まえて、形式記述(ルール記述)と説明的仮説(なぜその婚姻パターンが維持されるか)を提示。

    Denham はまた「開かれた系(openness)」と「閉じた系(closure)」という対概念を使い、Alyawarra 社会が局所的には閉じた親族語基盤を持ちながらも、婚姻ネットワークの階層性により広域的な結合(大陸規模の“small-world”な連結)を持つことを示します。これにより「一見閉じて見える制度が、実は広域的に開かれている」ことの説明を図式的に与えています。





    4. 主張と発見(要点)

    Denham の論文は多くの発見的観察を含みますが、主要な主張を整理すると次のようになります。

    A. 親族呼称と婚姻ルールは単なる“ラベル”ではなく、社会的実践を決定づける演算ルールである

    Denham は、親族呼称体系(誰をどう呼ぶか)が婚姻適格性、世代差の把握、育児(alloparenting)責任の分配に直接かかわることを示します。呼称の使い分けは社会的役割の期待を符号化しており、これを形式的に記述すれば制度的機能が明示される――という立場です。

    B. 年齢・世代の制度化(generation moieties)は婚姻パターンを安定化させるメカニズムである

    Denham は世代や age-grades に関する制度(世代モイエティなど)を分析し、それらが婚姻の周期性・適齢・exogamy(外婚)ルールと結びつくことで、集団が系統的に開閉を繰り返す構造を作ると論じます。これにより人口動態的ショックを吸収し、遺伝的・社会的多様性を保つシステム的効果が示唆されます。

    C. 地域的“開放性(openness)”と“閉鎖性(closure)”の両立

    表面的な用語や局所的婚姻規則は閉鎖的に見える一方で、婚姻のネットワーク構造(異言語集団との結びつき、居住移動パターン)を見ると、実際には集団間に“弱い紐帯(weak ties)”が多数存在し、全体としては結びつきが強い(small-world 化)ことが明らかになります。つまり制度上の“閉じる”ルールが、実際の社会的ダイナミクスでは“開く”構造を生む、という逆説的洞察が得られます。

    D. モデル化可能性と限界の提示

    Denham は、これらの構造を(理論的には)数学的にモデル化可能だと主張しますが、同時にモデル化の難しさ(膨大なデータ、特殊ケース、文化内の意味の読み取りの難しさ)も率直に認めています。「関係は数学モデルに適するが、そのモデル化にはさらなる作業・別の専門能力・長い時間が必要だ」と述べ、モデル化を達成するための現実的ハードルを提示します。






    5. 論文の方法論的貢献

    Denham の仕事は、次の点で方法論的に貢献します。

    1. 大量一次データの整備と公開 — Alyawarra に関する膨大な婚姻・親族・居住データを整理し、研究共同体が再利用可能な形で提示している(データセット記載あり)。

    2. 親族・婚姻の“図式化”手法 — 世代のヘリカル図・婚姻ネットワーク図など、視覚化ツールを用いて複雑な制度を直感的に把握できる方法を示した。

    3. 形式記述(formal description)とモデル化の青写真 — 文化ルールを変数・演算・制約の組み合わせとして書くことの有効性を示し、後続の数学的人類学・エージェントベース・シミュレーション研究への橋渡しを行った。





    6. 学術的反響と議論点

    Denham の一連の論考(2012–2015 にかけて MACT に複数寄稿)は、同領域の研究者たちから多数のコメント・反論・データ補充を誘発しています。Peter Sutton らによるクロスコメントや、地域別の婚姻率データを持ち出した実証的な補足が知られており、Denham の『閉鎖の虚構(fictions of closure)を超えて』という命題は活発に議論されました。いくつかの批判点は次の通りです(意見の要約):

    • 解釈の過度の一般化に対する懸念:Alyawarra の結果を他のアボリジニ社会や世界の親族制度へ普遍的に拡張するには注意が必要。

    • データの取り扱いと方法の透明性:データのコード化・変数選択・処理手順の詳細を求める声(再現性の観点)。

    • モデル化と意味論の分離に対する批判:形式化は有用だが、文化内的な意味(emic perspective)を疎外しかねないという批判もある。

    これらの議論はむしろ建設的で、Denham 自身も議論に対して応答や追加データの提示を行っています(同誌上のやり取り・クロスコメント群)。






    7. 考古学・数理考古学への含意

    Denham の親族・婚姻の形式化研究は、考古学(特に数理考古学・文化進化論)に対して次のような示唆を与えます。

    • 制度と物質文化のリンク:親族・婚姻ルールは居住パターンや交換ネットワークを通じて物質文化(遺物の流通や技術伝播)に影響を与えるため、制度モデルは物質変化モデルと統合可能。

    • ネットワーク的視座:婚姻ネットワークの small-world 構造は、遺物や技術の拡散モデル(拡散確率・ネットワーク中心性)と直接対応するため、考古学的拡散モデルを制度的に裏付けることができる。

    • モデル化手法の共有:親族モデルで用いられた図式化・演算的記述・シミュレーション手法は、考古学データ(遺跡間の婚姻に相当する交換関係や道具の伝播)にも応用しやすい。



    8. 結論(総括)

    Denham(2012)の “Kinship, Marriage and Age in Aboriginal Australia” は、豊富なフィールド素材を基にして親族・婚姻・年齢制度の複雑な相互作用を丁寧に描き出し、その構造性を数学的・形式的に記述可能であることを実証的に示した重要な論考です。


    Denham はモデル化の可能性を力強く主張すると同時に、方法論的限界や文化的意味の取り扱いに関する慎重な姿勢も示しており、現代の数理考古学・文化進化論と建設的に交差する知的資源を提供しています。





    あるけまや的コメント

    今回はまたもや比較的新しい時期の論文なのです。論文紹介しながら自分の研究の役にも立ったらなぁと選んでみました。

    Denhamが結構な数の論文を投稿している雑誌が「Mathematical Anthropology and Cultural Theory」
    なんですけども、私ほとんど読んだことないと思います。




    名前は知ってる気がするので読んでるのかも知れないけれど、研究者名と大体の出版年とタイトルの一部で覚えてるので、超有名誌以外あまり記憶ないんですよね( -д-)ノ

    せっかくの出会いなのでこれを機に、「Mathematical Anthropology and Cultural Theory」の論文を片っ端から読んでまとめてみようかなと思います!ヾ(´ω`=´ω`)ノ




    さて、人類学系の研究、それが数理研究であっても「血縁関係とか親族関係」の研究大好きですよね。考古学だと旧石器時代が大人気。

    絶対、国家形成とか通時的な研究の方が面白いのに!( ・Д・)

    まぁテーマが壮大なものになるし、その分多くの敵を作るからかな、、、だから私の周りは敵しかいないのか( ・Д・)




    結局のところ、血縁関係の数理的研究は古くからあるけれど、これまでと何がどう違うのかよく分らんのですよね。

    私が興味ない世界だからかな(笑)

    特殊な状況を除けば、血縁関係とかって考古学だとなかなか分からないからね。ティカルでも一部は分かっているけれど、やはり社会全体に拡張はできない。



    だから結局普遍性の問題にぶつかると思う。

    Denhamの研究も建設的批判を受けているように(建設的なだけいいよね( ・Д・))、普遍性が問題に
    なってるしね。




    厳しい言い方をするならば、

    せっかく数理手法を使って、複雑な現象を単純化することで一定量有用なモデルを構築しているのに、それが普遍的なルールじゃなければ一体どんな意味があるんだろう?と思ってしまう。



    私が考古学者だからかもしれない。

    遺物(型式)データを集めて、いい感じにプロットさえすれば、自然と数式(近似式)は得られるんだけれど、それはひとつの現象記述でしかない。そういう感覚があるからかもしれない。



    まぁ最大の要因は私の人類学に対する無知だと思うけど( -д-)ノ

    ってことで次回以降、「Mathematical Anthropology and Cultural Theory」を取り扱っていこうかなと思う。興味あるもの、もっと私の研究『物質文化マクロ生態学』に影響を与えるものを見つけたらそれを取り上げようかな!(*・ω・)ノ










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    2025ねん 10がつ 21にち(かよーび、くもり)

    腰が痛い!( ・Д・)

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    ↑数理的なイメージ!?( ・Д・)




    今回はアメリカ考古学、マヤ考古学の原点的重要論文ってこんな感じ!( ・Д・)ってお話です(*・ω・)ノ

    *最後にコメントがあるよ!(*^・ェ・)ノ




    『Method and Theory in American Archaeology』の要約と解釈

    はじめに

    本書は、アメリカ考古学(特に前コロンブス期/先史時代アメリカ大陸)を対象に、「考古学は単なる発掘・記述の学問ではなく、理論と方法論を伴った人類学の一分野である」という主張を提示するものである。


    著者のWilley と Phillips は、序論で次のように述べている:

    “American archaeology is anthropology or it is nothing.”

    この言葉は、考古資料をただ年代順・型別に整理するのではなく、人類文化における構造・過程・変化を明らかにすべきという視座を示している。


    本書は大きく2部構成となっており、第一部「文化‐歴史的統合の運用的基盤(An Operational Basis for Culture-Historical Integration)」、第二部「歴史‐発達的解釈(Historical-Developmental Interpretation)」に分かれている。






    第一部 文化‐歴史的統合の運用的基盤

    ここでは、考古学の記述レベル(観察・記録・分類)から、より説明・比較可能な形へと整備するための「単位(unit)」「型(typology)」「時空分布(spatial-temporal ordering and contextual relationships)」などの概念が論じられている。


    考古単位概念(Archaeological Unit Concepts)

    Willey & Phillips は、考古学が扱うべき「単位(units)」として、以下の3次元を明確に整理している:

    • 時間(chronological dimension)

    • 空間(spatial dimension)

    • 物質/型(material or typological dimension)

      彼らは、これらを統合して「文化‐歴史的統合(culture-historical integration)」を行うべきであり、単に“時代を追う”だけでなく、“形式・分布・機能・変化”を同時に捉えることが重要であると述べる。

    彼らはただし、当時のアメリカ考古学が「観察・記述」には熟達しているが、「説明(how/why)」「一般化(regularities)」には十分でないと批判する。

    序論より引用:

    “…the archaeologist’s ultimate purpose is the discovery of regularities that are in a sense spaceless and timeless.”

    この言葉が示すように、彼らは考古学を「単なる文化史」ではなく、「人間文化の法則を探る人類学的学問」であると位置づけた。



    考古統合(Archaeological Integration)

    次に彼らは、時空分布と文脈(context)を統合する作業―すなわち、遺物型・遺跡配置・技法・環境・交流ネットワークなど―を考古統合の中心課題とみなした。彼らは、


    “culture-historical integration … is both the spatial and temporal scales and the content and relationships which they measure.” 

    以上のように述べ、ただ「〇〇期 → △△期」という単純な系列化ではなく、「その変化がどのような空間的・物質的・社会的関係のもとに起きたか」を問うべきだと指摘している。


    つまり、この部では「型の定義・分類」「時空分布・類似性」など、タイプ論争で注目された“型・変異・分類”の基盤を、より大きな文脈(時空・文化)で位置づけている。





    第二部 歴史‐発達的解釈

    第二部では、アメリカ大陸先史文化を「Lithic → Archaic → Formative → Classic → Postclassic」という段階論的枠組みで整理し、各段階の特徴・時期・技術・社会変化を解説している。

    この発展モデルは、当時の考古学におけるタイプ論・遺跡分布論・文化進化の議論を俯瞰的に示すものであり、本書がタイプ論争や定量化考古学・ニューアーケオロジー(Processual Archaeology)への橋渡しとなる所以である。

    例えば、Lithic ステージ(石期)においては石器技術が主体とされ、Archaic ステージ(古期)では定住化・狩猟採集社会から農耕社会への移行が論じられる。Formative (形成期 / 先古典期)以降では、陶器・拡大集落・儀礼中心地・都市的要素などが出現し、Classic/Postclassic (古典期・後古典期)ではさらに社会組織・政治制度・交易網の複雑化が展開される。

    著者らは、そのような段階論を通じて、過去文化を「どのように変化したか」「なぜ変化したか」を説明するヒントを提供しており、考古学における単なる編年・型分類から一歩先の理論化・一般化を促した。






    タイプ論争との関係・意義

    本書がタイプ論争の文脈で重要なのは、タイプ(型)の概念を以下のように位置づけている点である:

    • 「型=分類単位」から、「型+時空+文脈=文化変化を読み取る手段」へと分類観を拡張している。

    • 型分類・時空分布・文化段階モデルを統合することで、考古学を説明レベルへ導こうと試みた。

    • また、「考古学は人類学である」という宣言を通じて、分類の方法論的枠組み(タイプ論争)を学際的・理論的に位置づけた。

    この意味で、『Method and Theory』は、タイプ論争(Krieger/Spaulding/Ford)を受け継ぎながら、「次の段階=理論的・モデル的考古学(定量化・説明志向)」へと道を拓いた意義ある著作といえる。






    方法論的特徴と影響

    本書の特徴的な論点はいくつか挙げられる:

    1. 分類・型・段階論の構造化
       遺物・遺跡・文化を型や段階で整理し、時代・空間・物質文化を横串に通す構造を提示。

    2. 時空分布・文脈の重視
       ただ形態を比較するのではなく、その出現・分布・変化を「なぜ・どのように」の視点で捉えるよう促した。

    3. 説明志向(processual interpretation)への準備
       本書では「機能的・原因的な説明(why)」を扱う「プロセス的解釈(processual interpretation)」という用語を前倒しで用いており、後のニューアーケオロジーへと発展する理論基盤を整えている。

    4. 分類の方法論的反省
       型の設定・許容変異・標本選定など、分類における方法論的課題を明示しており、タイプ論争での問題点(恣意性・比較可能性など)と重なる議論を含んでいる。

    5. 文化人類学との接続
       序論において、「考古学は人類学である」という命題を掲げ、人類文化を理解するための手段として遺物を扱う姿勢を明確にした。これは考古学を文化分析の科学へ引き上げる意図を反映している。





    制約・批判的視点

    • 本書が採用する段階論(Lithic→Archaic→Formative→Classic→Postclassic)は、後年の批判(多線進化・地域変異・交流体系の複雑性)により修正・否定される部分も多い。

    • 型・段階の分類は、時間・空間・文化の変化を必ずしも線形に捉えない現代的知見とは整合しない部分がある。

    • また、本書の多くの議論は「北米/中南米考古学(特にアメリカ新世界)」に限定されており、他地域への普遍化には注意を要する。





    現代的意義

    今日においても、『Method and Theory in American Archaeology』は考古学史・方法論史研究において必読の一冊であるとされている。デジタル技術・GIS・ネットワーク分析が進む現代でも、本書の「単位・型・時空・プロセス」という枠組みは参照可能な基盤である。例えば、GIS研究では本書が提示した「単位(unit)とは時間・空間・型の三次元をもつものである」という概念が引き合いに出されている。





    あるけまや流コメント

    『Method and Theory in American Archaeology』は、考古学の分類・型・段階論といった問題を高度に整理した、1950年代後半のアメリカ考古学における転換点的著作です。

    タイプ論争や定量化考古学・新考古学へと続く流れを理解するうえで不可欠な文献であり、文化史的な遺物記述を超えて「文化変化・人間行動・理論モデル」を視野に入れた考古学の姿勢を示しています。




    ・・・ということで彼らの宣言はとても重要だったけれど、今の研究者もなかなか実践できていないよね。まぁプロセス考古学的研究が劣勢だからってのもあるけれど( -д-)ノ



    私はプロセス考古学者を自認しているので、とても大好きな本ですね。


    しかしながら相違点ももちろんあって、

    彼らの考古学的単位は
    ・モノ(タイプ)
    ・空間
    ・時間

    の3次元ですが、


    私の『物質文化マクロ生態学』では考古学において捉えるべき単位は、
    ・モノ(タイプ)
    ・空間(社会的空間/位置)
    ・時間
    ・量(掘削した土量の単位体積辺りの重量/点数)

    の4次元です。


    これらの考古学単位に関する基礎データを用いて財の社会不均衡分布(構造)を分布式(経済学由来)で記述して、「なぜそうなるのか、なぜそう変わるのか」という『Why』や『How』の部分、つまり力学的な部分を進化式(生態学由来)で記述するのが物質文化マクロ生態学です。


    もうこの時点で私の研究との関連性が出てくるので、記事書いててもなんだか楽しいです。まぁこの先ものんびりと数理考古学の話をしていきましょ~!(=゚ω゚)人(゚ω゚=)ぃょぅ!








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    2025ねん 10がつ 20にち(げつよーび、雨)

    今晩たくさんマヤ文字書いて作業貯金をつくりたい!( ・Д・)

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



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    ↑数理的なイメージ!?( ・Д・)



    今回はリードの数学的人類学ってこんな感じ!( ・Д・)ってお話です(*・ω・)ノ

    *最後にコメントがあるよ!(*^・ェ・)ノ


    いきなり新しくなっちゃったけれど、何だか早く私の研究紹介もしたいなって思ったので、近年の考古学関連の数理的研究を紹介します!



    はじめに

    Dwight W. Read は、数学(抽象代数)を学んだのちに人類学・民族学の領域へ転じ、「文化構成要素(文化的な規範・親族用語・分類体系など)を数学的にモデル化できる」という視座を一貫して提示してきた研究者です。 

    「数学的人類学(mathematical anthropology)」というラベルが語るように、彼の研究は「文化とは定性的記述の対象だけではなく、数学モデル・形式的構造の対象になりうる」という立場を採っています。

    この枠組みは、20世紀後半の数理考古学・計量人類学の発展と重なっており、文化・物質・制度の三者を数学モデルで結びつけようとした点で注目に値します。



    研究の背景と動機

    Read の動機を整理すると、おおまかに以下のような観点からです:

    1. 文化構成要素の普遍構造志向
       彼は、親族用語・婚姻制度・分類体系・遺物型など、「社会文化の構成要素」が言語・地域・民族を超えて繰り返し出現するという仮説を持っていました。これらを形式的構造として捉え、「数学的構造(algebraic/graph-theoretic)として記述可能ではないか」を探求しました。

    2. 形式モデルと文化変化の橋渡し
       文化変化・技術変遷・制度変化を記述するためには、「何らかのモデル」が必要とされてきました。Read は、数理モデル(たとえば代数的記号系、行列、モデル‐シミュレーション)を用いることで、文化構造そのものを「動きうる構造体(structures in motion)」として扱おうとしました。

    3. 人類学・考古学における数量化・形式化志向との接続
       20世紀後半、考古学・人類学ともに「定量化」「計量化」「モデル化」への転換期にありました。Read の志向は、タイプ論争・定量考古学・数理人類学が提示した手法と並行・また先駆していた面があります。


    主たる論考の構成と内容

    以下はいくつかの代表的論考に基づいて、Read の「数学的人類学」がどのような構成になっていたかを整理します。

    (A) モデル化と文化の構成要素

    Read は「文化的構成要素(例えば親族用語体系、分類語、技法的特徴など)が、数学的に捉えられる形式を持っている」と主張しました。たとえば、ある親族用語体系を「代数的演算(kin‐term algebra)」として捉え、用語間の合成・結び付き・制約を記号論的にモデル化しようと試みています。これにより、文化的用語・制度を「数理モデルの変数」あるいは「構造方程式の変数」へと変換する試みがなされました。

    例えば、「クロスカズン婚 (cross‐cousin marriage)」を持つ親族体系を、代数的に “merge”/“bifurcate” といった演算規則で記述することで、変化の軌跡・系統・構造パターンの分析を可能にしようという志向があったことが、Read の後年の論文からも見て取れます。

    このようなモデル化において彼が強調する点は、「文化的構成要素そのものが偶然の集合ではなく、論理的・数学的に規定可能な構造を持ちうる」という点です。そのためには、属性・演算・構造・制約という数学モデルの基本要素を文化現象に適用する必要があります。


    (B) 数理モデルの方法論的課題

    Read は同時に、数理モデルを使う際に陥りがちな誤りや限界にも注意を向けています。たとえば次のような点です:

    • モデルがあまりに単純すぎて文化の複雑性を無視する危険。

    • 属性選定・モデルの仮定(パラメータ・演算規則)などが恣意的になりうる点。

    • モデル化された構造がその文化集団にとって意味を持っているか否か(=モデルの妥当性)を検証するプロセスの欠如

      このような課題を Read は論文「Some Comments on the Use of Mathematical Models in Anthropology(2017)」で整理しており、数学モデルを人類学に導入するための方法論的枠組みを提示しています。


    (C) 応用例と展開

    Read の数理人類学的アプローチは、以下のような領域に応用されてきました:

    • 親族体系の代数的分析:親族用語・結婚ルール・系統構造を数理的記号系で分析。例えば “The Generative Logic of Dravidian Language Terminologies” という論文では、分類体系を数理的に記述しています。

    • 社会‐人口モデル・シミュレーション:文化知識・決定モデル・人口動態を統合するエージェント・シミュレーション研究も行われています。

    • 考古論との接点:遺物分類・形式分析・クラスタリングと数理モデルの交差点において、「文化構造を数理モデルで捉える」試みとして位置づけられています。




    理論的意義・位置づけ

    Read の「数学的人類学」は、次のような意味を持ちます:

    • 文化・物質・制度という異なるレベルの分析対象を、「数理モデルを介して」統一的に捉えようとする試み。

    • 考古学・人類学・民族学における形式化・モデル化・定量化志向の一環として、タイプ論争・定量考古学の流れに連なる視座を示す。

    • また、研究者が分類・モデル構築を行う際の理論的・方法論的反省を促すものであり、「モデルを使えばすべて説明できる」という安易な立場への批判的な警告をも含んでいます。



    制約・今後の課題

    • 数理モデルの普及・適用は進んでいるものの、モデルが提示する構造と「過去社会あるいは文化的実践が実際にどうだったか」とのギャップを埋める検証が常に十分とは言えません。

    • 数理モデル化が進むことで、逆に「意味・価値・文化内的視点」が疎外されるという批判も根強く、Read 自身もその点を認識しています。




    ✏️ まとめ

    Dwight W. Read の「数学的人類学(Mathematical Anthropology)」というテーマは、文化を単なる質的対象としてではなく、数理モデルの対象として捉えるという、比較的少数派ながらも強力な視座を提供しています。考古学・人類学・民族学の境界領域において、「構造」「モデル」「数学」というキーワードを媒介に、文化・制度・物質をつなごうとする試みであり、「数理考古学」「定量文化史」「文化進化論」の流れにとっても重要な位置を占めています。





    あるけまや流コメント

    やはり近年の数理考古学や人類学等々における研究は、応用数学分野や物理学分野を専門とする研究者の流入が多いなと思います。

    経済学や社会学でも同様の現象が起きてますし、ちなみに日本考古学においても数理考古学で有名なのは応用数学の先生ですね。



    リードの研究も面白いし、言ってることも至極まっとうと思うんですよ。



    けど、私としてはやっぱどこか別分野の人だなって感じがしてしまう( -д-)ノ



    別分野の研究者の参入自体は問題ないとは思いますが、数理考古学の立場を考古学分野においてより強固とするには、そして定量的研究と定性的研究とで相互補完的研究を行う上で、考古学者自体が立ち上がらないとダメだと思うんですよね。

    他分野の彼らに任せれば任せるほど、後になったらもう考古学者には検証もできないほどに難解な数的理論が立ち上がってしまうでしょう。

    そして”伝統的”考古学者は言うのです、「世界はもっと『複雑』である」と。




    これがまさしく私が今既に、日本の考古学の学会で言われていることですけれど、考古学者自身が自分たちで理解できる範囲で出来る限りシンプルな数式を使ってモデル化していくことが大事だと思います。

    そうでなければ近い将来の数理考古学は考古学者の学問ではなく、数学者や物理学者の学問になってしまうでしょう(*^・ェ・)ノ








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